Z組です、天才です!
□秘密と後悔
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−side 周−
部活が終わった私の足は、調理室へ向かっていた。
紅羽は、調理室で企画の準備をしているはず。
この時期から進級間際にかけて、Z組はクラスを半分に分けてグループ研究をする。
私の分けられたグループは、紅羽、歩、グレイが所属し、
今日はそのテーマを決める話し合いをしようと思っていた。
…もっとも、歩は先に帰ってしまい、グレイは仕事が入ったから、実質二人だけなのだが。
「紅羽、いるか?」
調理室の扉を開けると、調理台へ向かう紅羽の姿が。
「ああ、やっぱりここにいたんだな。時間があればこのあと…」
私の声に振り返ったその姿に、私の思考は停止した。
いつもと変わらぬ表情だが、その頬に涙をのせていた。
「…指を切ったのか」
私の言葉に、彼女は首を横に振る。
「玉ねぎを切ったのか」
また同じように首を振った。
「何か言われたのか」
この言葉には、うつむいた。
私は紅羽に近寄った。
だが、こういうときにどうしていいか分からない。
「ファンデーションが落ちてきている…一度、顔を洗ってこい」
私の言葉に、今度は顔をあげた。
そして、ただ不安そうな顔で私の目を見て、こういうのだった。
「…顔を見ても、周は離れていかないって約束して」
「周…」
紅羽を待つ間、手の中で転がしていた栗をおいて、振り返った。
「…」
またしても言葉がでなかった。
ただ、紅羽が化粧をしている理由だけは察した。
「ひどいでしょ、この顔」
化粧映えする顔ではない。
むしろ、しない方がいいとすら思う顔立ちだ。
だが…その下に、隠しているものがあったのだ。
「…タバコか」
首筋、右の頬、唇の左下。
タバコを押し付けられたような、火傷の痕だった。
「…っ」
紅羽はまた目に涙をためた。
「あしだって…好きでメイクしてるんじゃないのっ…!」
そしてとうとう、顔を覆って泣き出してしまった。
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