Z組です、天才です!
□救いと決意
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−side 歩−
「最近誰かにつけられてる気がする…」
僕の目の前で、作詞用のノートを広げた結希が渋い顔で言った。
「は?」
「何かねー、帰るときにね、ずっと後ろから足音がついてくるんだよね」
珍しく眉間に皺を寄せて、僕に相談してきた。
「…生き霊でもついてきてるんじゃない」
僕はヘッドフォンを外し、背もたれに身を預けながら言った。
「冗談じゃなくてさー」
結希の表情に、チラチラと不安が見え隠れしているから、それが冗談じゃないことくらい分かる。
「まあ…本当に困ったら僕に連絡してもいいよ」
「…ありがとう」
珍しく塩らしく笑う結希に、何だか嫌な予感がした。
−side 結希−
あたし自身でもビックリするくらい怯えてしまっている。
ここ最近、誰かにあとをつけられている。
最初は気のせいだと思ってたけど、何日も続くもんだから…
流石に、怖くなった。
委員会室で今日の仕事を片付けながら思い出すと、少し身震いする。
「紫波、どうしたの?」
「あ、成瀬くん」
後ろからかけられた声に振り返ると、同じ風紀委員の成瀬くんが立っていた。
「いやあ、実は最近困ってることがあって」
心配かけまいとおどけて見せると、成瀬くんはあたしの隣に腰かけた。
「俺でよければ聞くよ?」
「うーん、それは怖いよね…」
「ちょっとね。まー、あゆと一緒に遅くまで作業してるから仕方ないんだけどね?」
「梅村くんと?一緒に帰ったりしないの?」
「うん、方向が逆だから、ひとりで帰るんだ」
「そうなんだ…寮って遠いもんね…あ、じゃあ俺が一緒に帰ろうか?」
いいこと思い付いたとばかりににっと笑う成瀬くんに、あたしはきょとんとした。
「俺、方向一緒だからさ!今日からでも、一緒に帰るよ!」
風紀委員の1年の中でも一際優しい成瀬くんの言葉に、あたしは目を輝かせた。
「うん…ありがとう!」
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