Z組です、天才です!

□救いと決意
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−side 歩−

「いい、これからしばらくの間は僕の側を離れないでよ」

次の日の朝、

僕は結希を迎えに寮まで行った。

昨日の今日だ、結希を一人にはできない。

「…ごめんね」

昨日のことがよっぽど怖かったんだろうな。

いつもの笑顔がどこかへ消えてしまっていた。

「謝んなくていいよ。僕も身近なやつが怪我とかすんのやだし…」

僕の頭に一瞬、紗貴と兎の顔が浮かんだ。





その日から数日間、何事もなく過ごした。

ストーカーする奴なんて何を考えてるか分からないから

逆恨みで結希を傷つけられちゃ困るし、できるだけ一緒にいた。

そして、そろそろほとぼりも冷めてきただろうと思っていた日の事


「結希、学食で食べよう」

「うん!」

結希にも大分笑顔が戻ってきていた。

そろそろ僕もお役御免だ。

そんなことを思っていた。

食堂は特別棟の2階にある。

1年生は教室棟の4階に教室があるから、少し遠い。

最近はどこに行くにも人通りの少ないところを、と思って移動していたけど

今日は、気が抜けていた。

少しの不注意だった。




「俺を選ばなかった報いだ」



後ろから聞こえてきた声に、振り向いたときにはもう遅かった。



「え、」



恨みや悔しさに満ちた、成瀬の表情。

階段の先へ突き落とされたのは、結希。

考えるより先に体が動いて、結希の手を取った。

が、それも虚しく、僕と結希の体は宙を舞う。




ダメだ。

こいつだけは、ダメなんだ。









「いっ…」

背中が痛くて起き上がることができない。

「結希…おい、結希!」

あの時、

咄嗟に結希を庇って僕は背中から階段を落ちた。

でも、ちゃんと庇いきれなかったらしい。

結希は頭から血を流し、声をかけても頬を叩いても返事がない。

「くそ…くそっ!!」

いつの間にか人だかりができていた。

僕は痛む体を無理矢理起こして、階段の上でほくそ笑む成瀬を睨む。

「お前、一生許さないからな…お前が突き落としたのは僕の唯一無二のパートナーだ!僕のものだ!勝手に傷つけるのは許さない!!」

僕が叫ぶと、周りがざわつく。

「歩!どうした!?」

すると、騒ぎを聞き付けた白馬と叶が僕たちに駆け寄って来た。

「結希が突き落とされて…庇ったけど頭を打ったみたいで、目を覚ましてくれないんだ」

珍しく慌てる僕を見て、白馬は僕を落ち着かせるように声をかける。

「大丈夫だ。おい、ここに保険委員はいないか!担架持ってきてくれ!」

白馬の声で、一人の男子がどこからか担架を持ってきた。

「結希はこれで運ぶぞ。叶は歩を連れてきてくれ」

「おっけー、白馬さん」

そう言って、白馬は結希を連れていった。

僕も叶の肩を借りて何とか立ち上がる。

すると、ギャラリーの中にバンビの姿が見えた。

「バンビ!」

呼ぶと、パソコンを持ったバンビがパタパタと駆け寄ってくる。

「言伝てを頼まれて。草に伝えて欲しいんだ」

そうして、僕は叶とバンビに事の経緯をすべて話した。









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