Z組です、天才です!
□輪を成す家
1ページ/4ページ
―side 紅羽―
この日、あたしは周の家へお邪魔することになっている。
それというのも、グループ研究のまとめ作業をするためだ。
歩とグレイが現地調査をしてくれた内容を、あたしと周がパワーポイントにまとめて完成させることになっている。
それを、周の家でやることにしたんだけど…
「周の友達か?」
チャイムを押すと、出てきたのは周ではなかった。
「あ、えと、はい…」
「じゃあ、あなたが周の言っていた子だな。周の父の輪(りん)だ」
出てきたのは、周のお父さんだった。
「藤紅羽です」
ペコリと頭を下げた。
顔をあげると、周のお父さんは周に似た顔で笑っている。
「紅羽、入りなさい。客間へ案内しよう」
「あ、はい!」
あたしは促されるままに、あたしは中へ入った。
「輪さん」
客間へ続く長い廊下を歩いていると、リビングから女の人が出てきた。
「美穂、周の友達だ。客間に茶を準備してくれ」
「あら、周のお友だち?こんにちは」
にこりと笑うその人は、周のお母さんのようだ。
あたしは頭を下げる。
「藤紅羽です。お邪魔します」
「ゆっくりしていってね」
客間へ入ると、周がパソコンに向かって作業をしていた。
「周、友達が来たぞ」
「はい、今行きま…」
振り返った周は、目を丸くしていた。
「父さん…私が出ると言ったじゃないですか」
「集中しているところに声をかけるのが憚られたんだ」
周のお父さんはそう言って部屋を出ていった。
周はばつが悪そうにあたしから目を反らした。
「あまり愛想のない父で悪いな。さあ、早速作業を始めるか」
周はそう言ってパソコンの前に座り直した。
あたしもそれに合わせて、パソコンを覗き込む。
「もうこんなに作ってくれたんだ!流石ね」
見ると、それはすでに半分ほど完成している。
「お前を待っている間にな。そっちのパソコンで発表原稿を作ってくれないか?」
「ん、わかった」
あたしは頷き、言われた通りに作業を始めた。
何分くらい経っただろう、
客間の扉を誰かが叩いた。
「母さんか…?どうぞ」
周が声をかけると、お盆を持って、誰かが入ってくる。
「お茶とお菓子、持ってきたよ」
お母さんかと思ったけど、それはあたしの見覚えのない人だった。
横を見ると、周が顔を青くしていた。
前を見れば、女の人がにっこり笑っていた。
あたしは何が起きているのかわからずに首を捻る。
「いつ帰ってきたんだ」
「さっき」
「何でわざわざお前が持ってくるんだ」
「お母さんが持ってけって」
盛大にため息をつく周に、あたしはますます分からなくなる。
そんなあたしに気付いて、周は説明してくれた。
「…姉だ」
姉…?
「…あんた、お姉さんいたの?」
顔を手で覆い、こくりと頷く周。
そんな周に構わず、あたしの前に出てくるお姉さん。
「姉の環(たまき)。紅羽ちゃんって言うんでしょ?よろしくね」
顔を青くする周ととって変わるように微笑むお姉さん。
その笑い方は、いつぞやの周にそっくりだった。
.