Z組です、天才です!

□輪を成す家
2ページ/4ページ

次の日、

部活も終わってそろそろ帰ろうと昇降口へ向かっていたところ、見覚えのある人を見つけた。

「あれ、環さん」

あたしが声をかけると、環さんはぱっとこちらを振り向く。

そして、安心したように笑顔を浮かべた。

「紅羽ちゃん。よかったら美術室まで案内してくれない?」

「美術室…周に用事ですか?」

聞くと、環さんは頷いた。

「新しいスケッチブックを持ってこいって。あたしが言われた訳じゃ無いんだけどね」

困ったように笑う環さんは、どこか悲しそうに見えた。





「周は…学校だとどんな感じ?」

美術室へ向かう途中、環さんがそんなことを聞いてきた。

「そうですね…真貴とはまた違った感じの優等生って感じです。何も言わずに、言われたことをちゃんとやるって感じ」

あたしは、あたしが見たままの周の姿を答えた。

すると、環さんはやっぱり悲しそうに笑う。

「そう…やっぱり、あたしのせいかな…」

そう言うと、環さんは立ち止まった。

「周は、小さい頃はあんなに大人しくなかったの。あたしが周を変えちゃったんだ。きっと、周はあたしを恨んでると思う」

あたしは何も言えなかった。

家族の問題に、他人が口を出すべきじゃない。

「…やっぱり、紅羽ちゃんが持っていってくれる?」

だから、そう言った環さんのお願いを、あたしは断れなかった。





「紅羽…何だ、お前が持ってきてくれたのか」

美術室へ入り、あたしは何も言わずに周にそれを渡した。

「父さんも、何もお前に頼まなくていいのにな」

受け取った周は、あたしの顔を見上げた。

「…環さんだよ、持ってきたの」

「環が?」

目を丸くした周に、あたしは頷く。

すると、周はあたしから目を反らした。


環さんは、周が環さんのことを恨んでいると思っている。

だけど、この表情を見れば、違うことくらいわかる。

「環さんと何かあったの?」

聞くと、周はあたしを見ずに、キャンパスに向かいながら独り言のように話始めた。



「私は環や父さんに恨まれるようなことをしたんだ」




.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ