Z組です、天才です!

□輪を成す家
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―side 周―

「お母さん!聞いて!」

小さな私は、母さんの腰に抱きついた。

「周、どうしたの?」

母さんは屈んで、私に目線を合わせてくれる。

まだ小学2年生の時の話だ。

「学校で作った粘土の作品が大会で入賞したんだ!今度、ホールで展示されるから、見に来て!」

このとき、私は図工の時間に作った作品が初めて入賞して、舞い上がっていた。

「周、ダメだよ」

お母さんにも見てもらいたくてお願いしていると、4つ上の姉の環にとめられた。

「何で?環も見に来るのに、お母さんはダメなの?」

「母さんはこの頃体調が優れないからだ」

何で何でと訪ねる私を制止したのは、父さんだった。

母さんは、元々体の弱い人で

何度も入院と退院を繰り返していた。

だが、まだ幼い私にはそれがよく理解できていなかった。

「どうしてもダメ?おねがーい!」

さらに駄々をこねると、母さんは困ったように笑った。

「輪さん、私、大丈夫だから。周、お母さん絶対見に行くからね。一緒にいこうね」

「うん!」

俺は目を輝かせて頷いた。

父さんや環が困ったような顔をしていることに気付かずに…




そして当日。

私は母さんの手を引いて作品展の会場を駆け回った。

「お母さん、あれが俺が作った…お母さん…?」

振り返ると、母さんは苦しそうに胸を押さえていた。

そしてそのまま、倒れてしまったのだ。


救急車で病院に運ばれた母さんが治療室から出てくるのを待っていると、

隣に座っていた環が、泣きながら私に言ったんだ。

「許さない…周のせいだから。お母さんが倒れたの、周がわがまま言ったせいだから!!」

環の言葉は、幼い私の心にずっしりと重いものを投げつけた。

「ごめん、なさい…俺がわがまま言ったから…ごめんなさい、ごめんなさい…!」

治療室から父さんが出てくるまで、俺と環は泣き続けていた。

その日、俺はもう二度と自分勝手なことをしないと決めた。

子供じみたわがままが、家族を悲しませるなら

自分を抑えることは容易い、と。





「あんたはいい子ね」

静かに話を聞いていた紅羽が言った。

「家族、大事よね」

「ああ…例え恨まれていても、私は家族が大切だ」

「そうよね。だから、進路も迷ってたのよね」

紅羽の言葉に、私は口をつぐんだ。

なぜ分かるのかなど、バカなことは言わない。

紅羽は、よく人を見ている。

だから、私が家を継ぐための進路を、やりたいことのために躊躇していることくらい、分かっていたのだろう。

「あんたはいい子ね。でも、まだ16じゃない」

みると、紅羽は頬杖をついて笑っていた。

「そんなに早く大人にならなくていいじゃない。それに、兄弟に言いたいことも言えなくて、何が家族よ」

その言葉に、心に乗った重りがとれたような気がした。

「…そうだな」







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