Z組です、天才です!

□冬休みとお兄ちゃん
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―side 光海―

「ミツ、男の子だとかっこいいんだね!」

「マジ?ありがと、雅」

次の日、琴乃さんと雅の案内で伏見稲荷大社へやって来た。

順路通りに行くとかなり歩くってことだったから、今日は『光海』の方で来た。

「雅、真貴さんと回ってきなよ。もうみんな散っちゃってるし、ほら、今なら真貴さん一人じゃん!」

普段の俺を褒めてくれた雅にこっそりと耳打ちをした。

「ええ…!?」

顔を赤くする雅に、俺は軽くウィンクした。

実は、瑞樹からちょっと聞いてるんだよねー。

「じゃ、俺は瑞樹と行くから!みーずきー!!」

「あ、ちょ…」

引き止めようとする雅を置いて、俺は瑞樹の元へと走った。






「ちょ、待っ…おま、速すぎ…」

「ミツ…運動不足すぎるだろ…」

30分近く経った頃、広い敷地を歩き回った俺は途中の階段で息も切れ切れになっていた。

「瑞樹みたいな体力バカと違うんだよ…っ!」

「それ遠回しに叶のことも貶してるから」

俺の少し先を行く瑞樹の背中を必死に追う。

「俺先に行って飲み物買ってるよ。頑張れ、元演劇部のホープ」

にっと笑った瑞樹は、歩みを速めてさっさと行ってしまった。

「くっそ、薄情もの…!あれの親友も楽なもんじゃないよ!」

俺も必死に足を動かした。




「お、終着点が見えてきたぞ…」

やっとこの階段地獄から解放される光が見えてきたとき

前に一人の女の人が歩いていることに気付いた。

すれ違うときに横目で見たその人に、俺は息をのんだ。


…俺の理想、そのものじゃないか。

黒く真っ直ぐ伸びた髪。

真っ白な肌にほんのり赤い頬が映える。

綺麗な黒目を隠すように長い睫毛。

一瞬見ただけでこんなにもはっきり分かる。

俺がずっと夢見てる、『可愛い』を、この人は持っている。

「あっ」

「あっ!」

追い抜こうとしたその時、彼女は階段に躓いて、俺は咄嗟に支えてしまった。

「だ、大丈夫?」

「あ…すみません、大丈夫です」

こちらを見た彼女と目が合う。

正面から見ても、やっぱり可愛い。

彼女も俺に思うところがあるのか、しばらく俺の目を見つめていた。



「…って、こんなに抱き止めてちゃ困りますよね!俺先行くんで!この辺足場悪いみたいなんで気を付けて!じゃあ!!」

その視線に耐えきれなくなった俺は、さっきまでの疲れが嘘のようにさっさと登りきってしまった。

「ミツ、お疲れ」

「瑞樹…」

俺を待っていた瑞樹は、ペットボトルを差し出してくる。

それを受け取って、俺は後ろの階段を振り返った。

…きっと彼女はすぐにここにやって来る。

さっきのことを思い出して、かっと顔が熱くなる。

「ミツ?顔が赤いけど…」

「だぁー!?何でもない、何でもない!さ、早く行こう!?」

「ちょっとミツ!?」

俺は瑞樹の手を引いて先へ進んだ。





これが、もう一度会うことになる『姫路あかる』ちゃんとの初めての出会いだなんて、誰が予想できただろう。





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