TITLE DREAM

□はじまり(慈郎)
1ページ/3ページ

 私には今、気になる人がいる。
 そう、まさに今、2メートルほど離れて私の横に立っている人。
 まず最初に目に入るのがくるくるの金髪で、それからテニス部なのかいつもリュックにラケットを刺していて、いつも眠そうな顔をしているけど、とっても整った容姿の、他校(制服からして氷帝学園中等部)の男の子。パッと見ヤンキーだけど、スポーツマンだから多分ヤンキーではないと思う。うん、きっと。
 途中から途中まで通学路が一緒なようで、登校の時にほぼ毎日遭遇して、大抵どちらかが前を歩いている。
 そして――今のように赤信号に捕まって、横断歩道の前で並んでしまう事もしばしばあるわけだ。

 彼と遭遇するようになってから丸二年が経っていた。つまり、彼は私と同じ中学三年生。中学時代の登校の記憶に必ずいれば、嫌でも気になってしまうというものだ。
 彼の名前は知らない。全く接点のない人に自分から話しかけられるほど私は外向的でもないので、心の中で勝手に呼び名をつけている。
 『黄雲(こううん)の君』と、私は彼のことをそう呼んでいた。くるくるあちこちに跳ねとんだ金髪がふわふわで雲みたいなので『黄雲』。見かけると何だかほんわかした気持ちにもなるので『幸運』ともかかっている。センス云々はこの際関係ない。どうせ心の中だけの呼び名だ。

 さて、こうして信号待ちで黄雲の君と並んでしまったわけだけれども、赤の他人とエレベーターで一緒になってしまったような待ち時間特有の気まずさはいい加減慣れで私は感じなくなっており、お互い何をするでもなくボーッと突っ立っている。
 と、黄雲の君が動く気配がした。音だけで解かったのは、リュックを肩から下ろして中から何かガサガサいう物を取り出し、またリュックを背負ったこと。
 何だろう?と横目で盗み見してみると、黄雲の君は数十個入りの飴の袋を持っていて、今からそれを開けるところだった。彼はたまに飴とかガムとかを口に含んでいて、甘い物好きなんだなあと思う。
 袋の上部に刻まれたギザギザのど真ん中に指をかけ、真っ直ぐに裂く――
.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ