TITLE DREAM

□おわり(千石)
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 彼女が去っていった部室で、彼女が捨てていった指輪を指先で弄びながら、俺は。

 静かに頬を伝う生温かい液体に気づかないフリをしていた。


 大事だったんだ。何よりも。
 傍にいたかったんだ。いてほしかったんだ。

 不器用な俺は、本気で好きになった君をどうすれば繋ぎ止めておけるのか。
 そればかりを考えて。

 君には伝わらなくて。

 君の事を、傷つけてた。


 君はいつだったか、ラッキーな俺といたら幸せになれるねと言って笑ったけれど。

 …ごめんね。
 あの時には俺のラッキー、既になかったんだ。

 幼い頃から続いていた俺のラッキーは、君を手に入れた時点で尽きていたんだ。
 あとはアンラッキーの一途を辿るだけ。



 ――「おわりにしよう」



 君の最後の声が頭の中を駆け巡る。
 終末が訪れてしまった事に、恐怖する。





 君の孤独が、俺の孤独を埋めてくれると思ってたのに――





 彼女がこの部屋を出て行ってからしばらく経つ。
 それでも誰も俺を捕まえにここに来ないのは、彼女が誰にも言わなかったから。

 わざとなのか、もう俺の事なんかどうでもいいのか、解からないけど。

 彼女の優しさが、痛かった。


 頬を伝う生温かい液体が、熱さを増したような気がした。





END





03.12.13

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