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□☆深層心理の中で生き続ける。(L)
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「んっ…はぁ…L…」

 仕事が一区切り付いて、今はあなたとの情事に勤しむ。
 忙しさにかまけ過ぎていて、あなたにはいつも淋しい思いをさせていた。
 あなたは何も言わないけれど、解かるんだ。
 私自身がそうだから。

 淋しい
 あなたに触れたい
 そう思う。

 これはその埋め合わせ。
 ぽっかりと胸に空いた穴を埋めるのはあなたにしか出来ない。

 「Lがそんな事思うなんて思わなかった」
 あなたはそう言ったけれど、「私だって男なんですよ」と言うと、ただ微笑んで私に抱きついた。

「L…ッ…エル…」

 深く突き上げる度にあなたは虚ろな目をして、いつもより高い声で私の名を呼ぶ。

 L、竜崎、流河。
 私には幾つもの名があるが、どれも私の名ではない。
 あなたも場面に応じて呼び名を変えてくれるが、一番呼び親しんでいるのは私の通り名である『L』。
 でも一度だけ、あなたにだけ本名を明かした事があった。
 他言無用、決して呼んではいけませんと釘を刺して。
 ただあなたにだけは知っていてほしかった。
 私の本当の名を。

「ふ、ぅっ…Lっ…」

 生理的な涙をぽろぽろ零して、あなたは必死に私に縋る。
 あなたの肉襞は私自身を包み込んで、時折きつく締め付けた。
 私は幾度も果てそうになったが、あなたを満足させるにはこれだけでは足りない。
 もっと埋めなくては。
 もっと深く刻まなくては。

 あなたに、私を。
 私に、あなたを。

 次が訪れるまで、忘れないようにと。



「はぁっ、アっ…ん…『  』――!」



 果てる間際。

 あなたが私の名を呼んだ。
 自分ですら忘れかけていた、本当の名を。
 一度だけしか言わなかったのに、咄嗟に出てくるくらいまで覚えていてくれたんだ。

 それだけで、涙が浮かんだ。


 誰もが忘れてしまってもいい、私の名など。
 それは自らを危険に追い遣るだけのものだ。

 でも、あなただけは。
 あなただけは忘れないでいてほしい。
 親から与えられた私の名を。

 私が忘れてしまっても。



 あなただけはどうか、忘れないでいて。












深層心理の中で生き続ける、私の。





04.6.17

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