20のお題
□01:沈黙が心地よい時もある(ルゾロ)
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ゾロは寝るのがすきだ。
晴れた日は、ぽかぽかと陽射しを受けた芝生の甲板の上で。
少し風の吹く日には、ミカンの木の間に身を横たえて。
雨の日は、見張り台で打ち付ける雨の音を聞きながら。
雪の日は、暖かなキッチンでぐっと焼酎の瓶を傾けた後に。
暑くて暑くてたまらない日には、船長の特等席である船首の上をひと足お先に占領したりもする。
金の髪をした口煩いコックは
「食事の時ぐらい自分で起きやがれ」
と怒るけれど。
剣士たるもの、いつ何が起こるか分からない海賊船の上だからこそ、気を抜けるときに抜いておかねぇといけねェ。
と、ゾロは思っている。
ルフィは騒ぐのがすきだ。
島が見えれば
「しーまーだー!!」
お腹がすけば
「めーーしぃーーー!」
食事が出てきて
「うまほー!!」
たらふく食べたら
「ぶへーーっ。食った食った!!」
特等席を取られた時には
「おいゾロ、そこはおれんだぞー!」
オレンジの髪をした航海士は、
「まったく、あんたには緊張感ってもんがないわけ?!」
と呆れていたけれど。
せっかくの冒険、楽しまねーと損だぜ?
と、ルフィは思っている。
「ゾーロ、おい、ゾロ! 」
ルフィがゾロに話しかける。
「………ん…ルフィか…」
今日もやっぱりゾロはすやすや。
「おまえ、そこで寝るなって!
俺が乗れねェだろ」
今日もやっぱりルフィは騒ぐ。
「…じゃ、おれ、ゾロの上に寝ちまうぞ?」
またまたルフィがゾロに話しかける。
「…好きにしろ…」
またまたやっぱりゾロはすやすや。
またまたやっぱりルフィは…
「…ぐー…」
今日の二人は、そろってすやすや。
二人で見る夢も悪くねェな。
と、ゾロは思っている。
ゾロと夢のなかで冒険するのも悪くねェな。
と、ルフィは思っている。
サニーの上に寝そべったまま、二人の上をそんなとある静かな午後が通り過ぎていった。