おはなし

□月と水面(サンゾロ,sideゾロ)
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くっ と酒瓶を傾けて中身を飲み干す。
まだ飲み足りねぇな…

一旦降りて酒補充すっか。
俺は下に降りるために腰をあげようとした。



すると背後から、たん、たん、と梯子を登ってくる音が微かに聞こえてきた。


「よう、月見酒とは、なかなかオツなことするじゃねぇか。マリモの癖に」

上げかけた腰を再びどっかりと床に据え直す。
「…お前、寝たんじゃなかったのか」


「つまみ持って来てやったんだよ。どうせろくに食わねェで酒ばっかり飲んでたんだろ?ったく、胃に悪ィ。…ほら、食え。」

酒瓶と皿を持って現れた今日の主役は、俺に向かってぐい、と皿を差し出す。


「ありがてェが…それ置いたらさっさと寝に行けよ。せっかく不寝番替わってやったんだからよ…いただきます。」

「なんだよ、冷てぇな〜。せっかくグラスも二つ持って来たんだぜ? 一緒に飲んでもいいだろ?」

コックは俺の隣に腰を下ろしながら、俺が返事をするより先に、二つのグラスに酒を注いでいる。

「…しょうがねェ、付き合ってやる。ただし、おめぇは酒、三杯までだ」

「三杯って…少なくねェ?」
「お前、昨日飲みすぎてめちゃくちゃ俺にひっついてきたの覚えてねェのかよ!!今日は、三杯飲んだらさっさと寝ろ」

「なんでだよー!俺…誕生日なんだぜ?今日ぐらいちょっとくっついてたって、いいだろ?」

「てめェはいつもひっついてくるだろーが!!」

「ゾロのくそけちまりも。」

コックは俺の隣でくちをとんがらかして、酒を呑んでいる。
白い顔にはもう、ほんのりと紅が差していて…ちょっときれいだ。と思ってしまう。

こいつはお喋りで、五月蝿くて、ちょっと優しくすりゃあすぐ調子にのりやがるあほコックだ。
だが…俺ぁやっぱり、こいつには甘ぇんだ。



「…おいコック。」
「どうした?ゾロ」


振り向いたコックの腕からグラスを奪いとり、残っていた酒を口に含む。

そうして、アホみてぇに口を開けてこっちを見てるコックの喉に、それを送りこんでやった。


「ちょっとその口、閉じとけ。
月見酒つうのは、黙って楽しむもんだぜ?」



コックは顔を真っ赤にして黙った。
いい気味だ。

だが、俺が酒を自分のグラスに注ごうとした次の瞬間には、すげぇ勢いで飛びついてきやがった。


「ゾロ…そんな可愛いことするなんて…俺を誘ってんのか?!」

「は?さそ…っ?!ち、違ぇ!!」

「ゾロ…クソ愛してるvvv」

「…っっ!!」


どうやら…俺はこの変態コックを刺激しちまったらしい。
こうなったら…もう行くところまでいっちまうしかねェな…。

俺は、チョッパーに止められて、結局渡すことが出来ずにいたプレゼントを、こいつにやることにした。
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