おはなし
□月と水面(サンゾロ,sideゾロ)
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「おい、コック…ちょっと目、瞑ってろ。」
「んv」
コックは機嫌がよくなったようで、俺の言う通り素直に目を瞑った。
俺は、ナミに貰ったそれを自分の頭に縛りつける。ちっと形が崩れちまったみてェだが…ま、大丈夫だろう。
「よし、開けていいぞ。」
コックはそっと目を開いて…その瞳孔が俺を捕らえ、ぱっと広がる。
「…ゾロ…?」
「サンジ、誕生日おめでとう。俺からおまえにあげられるものは、何もねェ。………だがよ。この身体と心は全部、おめぇのもんだ。」
コックはさらに目をまんまるくしたかと思うと…左の瞳からポロポロと涙を流す。
「お、おい、泣くな!」
チョッパーの言ったように、『刺激が強すぎ』たのだろうか。
「…だってよ、めちゃくちゃ嬉しいじゃねェか。おれ…もう死んでもいいかも」
「ばか、軽々しく死ぬとかいうんじゃねェ !」
ますます焦る俺。
するとコックはへらりと笑って。
俺の頭のリボンをほどいて。
こう、言った。
「じゃあ、遠慮なくいただきますv」
コックの指が、俺の開かない左目の傷に触れる。
…ああ、また、掻き回してやるつもりが、かきみだされちまったのか…
まだまだ修行が足りねェな…。
…翌朝俺は、軽々しくナミの提案を信じた自分を激しく悔やむことになるのだった。
(→後書き)