闇夜に潜む猫

□帰ってくる
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「はい。今日は、私が日直なので」

「ふーん。……奈織ちゃん、ちょっとおいで」


急にそう言われ、奈織は恐る恐る龍騎に近付く。
その次の瞬間、龍騎は、なんの前触れもなく奈織を抱き締めた。


「偉いね、奈織ちゃんは」
      

龍騎にとっては、大したことではなかった。
ただ、女性を褒める時にするとこをしただけ。
しかし、奈織の中では嫌な記憶が蘇っていた。


ーいい子にしていれば、すぐに終わるからなー


「嫌っ!!!」


奈織は、声を上げ、龍騎を突き飛ばした。
勿論、龍騎はそのことに驚きを隠せないでいる。
息を切らせながら我に返った奈織は、声を震えさせながら謝った。


「あっ、ごめんなさい。私……」


さっきと様子が全然違う奈織を心配してか、再び奈織に近付こうとした瞬間――、


「それ以上、近付くな!!」


そう言って、由那が奈織を庇うかのように龍騎の前に立ち塞がる。


「由那?なんで……」

「たく、ロクに男を克服出来てないクセに簡単に触られんなよ。それと――」


由那は龍騎を睨み付けて、こう続けた。


「奈織に気安く近寄んな」

「あーぁ、由那ちゃんが来ちゃったなら、仕方ないよね。…じゃぁ、奈織ちゃん、また後でね」


残念そうに肩を落として、手をヒラヒラさせながら龍騎は教室を出て行った。




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