猫の休憩室
□安倍家の長男は愛されている
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ある日の安倍家。
「六合、騰蛇がここへ来たか?」
「……いや、来てはいないが」
急に部屋の扉を荒く開けたかと思ったら、青龍の第一声がこれである。
課題をしていた六合も、その手を止め、青龍へと目を向けた。
「何かあったのか?」
「騰蛇が、また新しい傷をつくっていたんだ。逃げ足の早い奴め。見つけ出したら只では済まさん」
その青龍の言葉に、六合は首を傾げる。
いつも以上に苛立っている青龍の様子から、理由は1つしか思い浮かばなかったからだ。
「また巻き込まれたのか?」
「らしい。奴のお人好しには呆れを通り越して、敬意すら感じる」
確かに、そのことに関しては青龍と同意だが。
六合は、チラッとだけベッドへと目線を向け、ため息をついてから、青龍にこう言った。
「だが、ここには騰蛇はいない。リビングで待っている方が高率がいいだろう」
それに、そんな空気を流されていては、自分も課題に集中出来ないからと心の中で呟く六合。
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