闇夜に潜む猫

□気まぐれ猫・紫雲
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ある街では、こんな噂が流れていた。

――この街には、とても喧嘩が強い族がいるらしい。しかも、その族は、たったの6人しかいないらしく、その内の4人は女性なんだ――と。



ここは第4地区・フィオーレ。
最近、この街では、人から人へとある噂が流れていた。


「聞いたか?例の6人組がまた暴れてたらしいぜ」

「マジかよ。今度は、誰が犠牲になったんだ?」

「犠牲になったのは、この街で大将気取りしていた“鯱<シャチ>”だ。猫に喉元掻っ切られたらしい」

「うわー…、容赦ねぇな。俺、絶対その女とは付き合えねぇわ」


もはやこの街で、その噂を知らない者は無に等しかった。


「………これはまた、随分と好き勝手言ってくれちゃって」


擦れ違い際に男達のそんな話を聞き、赤い髪に碧眼を持つ女性・猪狩 未央<イカリ ミオ>は溜め息をついた。


「まぁ、アンタらみたいな男、こっちから願い下げだけどさ」


自分達が話していた人物がすぐそこにいたことにも気付かずに歩く男達の背中を見つめ、未央は、そう悪態をつきながら、家の中へ入って行った。



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