野良猫の抜け道

復讐の紫炎は薔薇を散らす(本編)
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バラの乙女のものがたり






昔々のお話です。



あるところに、大きなお城がありました。

そのお城は、一年中
色とりどりのきれいなバラにかこまれていました。

お城はいつしか、「バラの城」
と呼ばれるようになっていました。

そしてお城の中には、
とてもかわいくてうつくしい、
一人のお姫さまが住んでいたのです。



お姫さまのウワサをききつけた、たくさんの王子さまが、
「お姫さまとけっこんさせてください」
バラの城に住む王さまと王妃さまに
申しこむ日がつづいていました。

そんなある日、一人の王子さまが、
「お姫さまとけっこんさせてくれなけば、お城をせめます」
王さまと王妃さまにいいました。

こまった王さまと王妃さまは、お姫さまを、
お城のおくの、ずっとおくにある、
古びた塔にとじこめてしまったのです。



塔にとじこめられたお姫さまは、泣きながらこういいました。
「わたしにツバサがあれば、お城をでて、海をこえ、自由に生きるのに」
それからお姫さまは、
さびしさをまぎらわせるため、
塔のそとからみえる空をみつめながら、
毎日歌をうたいました。



塔にとじこめられたお姫さまの歌声は、
風にのり、森をぬけ、海をわたり、流れ星にさそわれ、
一人の騎士のもとにたどりつきました。

お姫さまの歌声にひかれ、騎士は旅にでることにしました。

流れ星をみちしるべに、海をわたり、森をぬけ、風にのって、
とうとう、お姫さまがとじこめられている塔にたどりつきました。



お姫さまと騎士は、一目で恋におちました。



お姫さまは騎士にいいました。
「バラの騎士さま、どうか私をここからつれだしてください」
お姫さまのお願いに、騎士はこたえました。
「あなたのためなら、どこへでも」
騎士はお姫さまを塔からつれだしました。



お姫さまをつれだされ、
バラの城の王さまは怒りくるいました。

そして、おおぜいの兵士を引きつれ、騎士をつかまえて、こういいました。
「姫と共にいたくば、あまたの王子とたたかい、勝ってみせよ」
王さまの命令に、騎士はこたえました。
「私の命は姫のために。相手がだれであろうと、勝ってみせましょう」



バラの城で、武術大会がひらかれることになりました。
みごと勝ちぬいた者には、バラのお姫さまと婚約ができるとききつけ、
世界中の王子さまが、バラの城にやって来ました。
その中には、もちろん、お姫さまの騎士の姿もありました。



騎士はたくさんの王子さまをたおし、ついに、武術大会で王者にかがやきました。
これに王さまもなっとくし、お姫さまと騎士の婚約をみとめました。



お姫さまは騎士にいいました。
「これからも、私の騎士さまでいてください」
お姫さまのお願いに、騎士はこたえました。
「私の命がつきるまで、ずっと、あなたのおそばにおります」



こうして、お姫さまと騎士は身分ちがいの恋を実らせ、
二人はいつまでも幸せに暮らしました。

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