お題
□Long
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Long
「俺が、あんたの前からいなくなったら、そのまま誰か他の人を愛してくれる?」
「無理ですよ」
キミはそこですごく哀しそうな、傷ついたような顔をしました。
「アタシはね、キミの愛し方しか知らないんスよ。キミが大人になって、オジサンになって、お爺サンになって死んでしまっても、アタシはずっとキミを愛してます」
キミの表情は変わりません。
「死んでからだってそうですよ」
アタシはキミの哀しむ顔をどうにか別のものに変えたくて、言葉を続けます。
「キミが生まれ変わったら、またキミの愛し方を考えて、学んで、キミを愛します」
睫毛に透明が溢れます。
「生きてたって、死んでたって、アタシはキミを愛しつづけます。物質として残りはしないけど、この気持ちは本物です。キミがいなくなったら、もっと愛していたら良かったと後悔すると思います。きっと泣きます。キミの元へ行こうと考えます」
泣きそうなキミは、ひどく綺麗に見えました。
「でもね、キミを愛した日々は本物です。生きてなきゃ、泣いてばかりじゃ、アタシも恰好悪いし、キミは怒るだろうし、何より哀しむでしょう?」
今のキミみたいに。
「だから、時間がかかっても前を向きます。過去のアナタに縋るのじゃなく、未来のアナタを探します。だから、そんな顔しないで下さい」
キミは眉間にグッと力を入れて、こちらを向きました。
「無理しなくていいから」
「はい」
「泣いていい」
「はい」
「すぐ帰ってくる」
「はい」
「待っててくれ」
「はい」
「毎日考えなくていい」
「はい」
「他の人好きになっていい」
「はい」
「重荷になったら捨てていいから」
「‥‥」
「でも、忘れないで‥‥覚えていて」
透明がひとつ落ちてきます。
「キミとの想い出を捨てるなんて、そんな馬鹿なこと、いくら哀しくても出来ません」
絶対にしません