お題

□脱ぐ
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脱ぐ









近所の酒屋さんが届けてくれた古酒。



「旨い」



その言葉に、つい酒をなみなみと注いでしまった。
ベロンベロンに酔っ払った彼は卓袱台に顔を突っ伏したままおもむろに体を動かし始める。
厚手のパーカを脱ぎ、その下に着たTシャツも脱ぎ、そこら辺に投げ捨てる。









大声で笑い出したのが夜一サン。


布団を敷いて参りますと冷静に立ち上がったのがテッサイ。


見とれてしまったのがアタシ。









ベルトを外す金属音が、その間にも響く。
アタシは黒崎サンを急いで抱き上げた。


「寝かせて来ます」


「すぐに戻って来るのじゃぞ、喜助」


夜一サンが釘を刺すのを背中で聞き、テッサイと入れ違いに私室に入った。


「んっ‥‥うらは‥‥ら、さん?」


「はい」


布団に寝かせると、黒崎サンは薄暗闇の中にアタシを探して視線を漂わせた。


「‥‥脱がせ‥‥て」


なんで今、そういう声出すんスかねぇ。


「脱がすだけっスからね?」


「ん」


そうは言っても、上半身裸の彼が纏っているものなんて多くはない。伸ばした手が引っ込む。


「‥‥全部?」


「ん」


それはアレですか?
食べちゃっていいってことっスか?


「黒崎サ‥‥」


「喜助!!」


「よ、夜一サン。な、なんですか」


「良からぬことを考えたじゃろう?」


「えっ、そ、そんなことは‥‥」


伸ばした手がまた引っ込む。


「ならさっさと帰って来い」


「黒崎サンが脱がせって言うもんですから!」


首根っこを掴んで、アタシを引きずっていこうとした夜一サンは、布団の上の彼を見た。
アタシを廊下に放置して、夜一サンは黒崎サンのベルトに手をかけ、あっという間に素っ裸にして布団をかけてしまう。


「さて、飲み直しじゃの」


廊下を引きずられるアタシの耳には、黒崎サンの穏やかな寝息が聞こえるだけだった。




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