お題

□耐える
1ページ/2ページ


耐える









日本酒と称して泡盛を差し出す。
酒を嗜まない健全な彼には、ふたつの違いなんて度数くらい。
でも、



「いつもと一緒ですよー。疲れてるからそんなふうに感じるんじゃないですか?」



真っ赤な嘘。
彼の感覚神経もそれに対する脳の判断も、至って正常。
普段飲み慣れていない泡盛なんか飲んだら、おかしいと思うのは当たり前。



「チューハイばっかり飲んでるからっスよ、男ならぐいっとお飲みなさいな」



煽れば意地を張るのが、彼の弱いところだ。
二口、三口と泡盛を運ぶ。



「あつ」



Tシャツをパタパタと浮かせ、外気に肌を触れさせる。



「もういっそ、脱げばいいじゃないスか」



血行がよくなったせいか、首元が赤く色づいている。
その姿に、欲情してしまう。



「‥‥いや‥‥だ」

「なんで?」

「あんた‥‥ぜったいに、もるから」

「でも、熱いんでしょ?」



その手を握ればすぐに分かる。



「溢れ出した熱なら、アタシが受け止めてさしあげましょ?」

「あした、ガッコいけなくなるからいやだ」



熱を持った吐息を吐き出しながら、その言葉は紡がれる。苦しそうな息づかい。



「我慢しなくていいんスよ?」

「がまんなんか、してねぇ」



根気くらべ。
アタシが引き下がるか、黒崎サンが落ちるか。



「いつまで、耐えられますかねー?」



キミの柔肌にしるしを付けるまで、あとどれくらい?




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ