ギフト
□電波なんて回りくどい
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電波なんて回りくどい
「携帯電話とか、持たないんだな」
文をしたためる右手を見ながらの呟きに、浦原さんは一言。
「えぇ」
肯定の間も筆は止まらない。
「技術開発局の局長してたわりには、アナログなんだな」
「携帯は早くて便利っスけどね。でも、やっぱり手紙のほうがアタシはしっくりきますね」
「でもさ、すぐに逢いたい時とかも手紙だったら連絡するのに何日もかかるし、効率悪いよな」
浦原さんの手が、初めて止まる。
「携帯電話なんかあったら、黒崎サンがアタシに直接逢いに来てくれる機会が減るでしょ?だから携帯なんて必要ないんスよ。黒崎サンが淋しいなら、毎日でも逢いに行きますしね」
文へと向き直る横顔が笑う。
俺も多分、にやにやしてる。