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□罰せられるべきはぼくだった
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ぽたり、ぽたりと真紅の花びらが床に咲き乱れる。


きれいだ。本当に、美しい。


ゆらゆら、ゆらゆら

意識が遠のく。
このまま眠ってしまおうか。





「紫苑!」
沈みかけた意識が耳慣れた声の持ち主によって引き戻される。


あぁ、もう少しだったのに。
きみはいつも、邪魔をする。


「あんた、また………っ…今、手当するから」


手当?お願いだからやめてくれ。
ぼくにはそんな価値はない。


「ネズミ、ぼくを殺して」
「いい加減にしろ」
「ネズミ、聞いて。ぼくは自分が怖いんだ。ぼくの中にはもう一人のぼくがいる。そいつは無慈悲に平気で人を殺す。以前は否定したけど、やっぱりぼくは………NO.6そのものかもしれない」
「紫苑、それは違う」
「違わない。そいつは今も、そしてこれからもどんどんぼくを蝕むんだ。ぼくが、ぼくでいられるうちに………きみの知っている紫苑であるうちに、ぼくを、殺せ」
「前にも言ったよな。あんた、おれに人殺しさせる気か」
「…そうだ」
「勝手だな」
「勝手だ」
「だったら!」
「っもう嫌なんだ!ぼくは何人の命をこの手で奪った?ぼくは邪悪な罪人だ。穢れている。もしかしたら…………きみも殺してしまうかもしれない。きみを失ったらぼくは生きていけない」
「…っなんで分からない、おれだって………あんたなしじゃ、もう生きていけない」


ぽたり、
温かい雫がきみの頬を伝ってぼくの自傷行為を繰り返した腕に落ちた。


まただ。またきみを泣かせてしまった。もう二度ときみの涙は見たくなかったのに。
これも罪。また一つ、増えた。


*end*

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