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日記より。アニメのネズミの家にピアノがあってたぎった。
*
「これ、全部弾けるのか…?」
目を輝かせて言う紫苑が見ているのは、壁に張り付けられた古びた楽譜。
黄ばんだり、破れてはいるがちゃんと読める。
「まぁ、一応は。舞台での音取りとか必要だし」
「っ、すごいな」
「そう?あんたはピアノ、弾けないの?」
「NO.6では音楽とか芸術の類は推奨されてなかったから…ピアノの音色すらほとんど聴いたことない」
「なるほどね」
「ネズミ、何でもいいからちょっと弾いてみてくれないか?ぜひ聴きたい」
「鑑賞料とるけど良い?」
「え」
紫苑は少し慌てる。…これだから天然は。
「冗談だって。
せっかくだから陛下の要望にお答えしましょう。
何がいい?結構なんでも弾けるけど」
「ここにない曲でもいいのか?」
「陛下のお望みのままに」
「…昔、母さんがよく歌ってくれた歌なんだけど…」
「どんなの?歌ってみて」
紫苑は少し遠慮がちに歌いだす。
やっぱりなかなか良い声をしてる。
上手いとは言えないけれど、不思議と心地良い。
「…こういう歌なんだけど、弾ける?」
「こんな感じ?」
鍵盤の上でリズミカルに指を滑らす。
少しアレンジも加えて。
「すごい…一回聴いただけなのに」
「余裕」
「ネズミ、ありがとう。きみの奏でる音色は心に染み渡る」
そう言うと紫苑はふわりと欠伸をした。
「眠いのか?」
「うん、そろそろ寝ようかな…」
「じゃあ子守唄がわりにこのままこの曲弾いててやるよ」
「…いいのか?」
「おやすみ、ぼうや。良い夢を」
「…ありがとう」
礼を言って照れくさそうに笑う。
ピアノの音が紫苑を優しく包み込むように降り注いだ。
*