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□きみに、伝える
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「好き、という気持ちはどうやったら表現できる?」


パタン。
ネズミは音を立てて本を閉じ、紫苑を見上げる。


「おれはいつからあんたの先生になった?そんなの、自分で考えろ。それともあんたは人からいちいち言われないと、自分の気持ちも表現出来ないわけ?」
「ばかにするな。ぼくだって此処にきてから色々学んだ。というよりきみに、鍛えられた」
「じゃぁいちいち聞くな。イラツク。何処かの誰かに、好きなだけ想いを伝えてくればいい」
「ネズミ、きみなんか変だ」
「うるさい!」
何故おれはこんなにイライラしてる?
紫苑だって16歳の健全な男子。いくら天然だからって、誰かに心惹かれることはあるだろう。なのに何故胸がざわめく。手放したくないと思う??


「…ネズミ?」
急に黙り込んだネズミに紫苑が訝しげに声をかけた。


「もしかして…ヤキモチ?」
「は?」
自意識過剰も大概にしろ、とかいくらでも言い返すことが出来るはずなのに、
「だったらどうする?」
紡ぎ出された言葉には余裕なんて一欠けらもなかった。むしろ紫苑のほうが余裕そうに笑みを浮かべる。
「こうする」
甘い口づけ。抗うことは出来なかった。いや、抗いたくなかった。侵入してくる舌に自分も舌を絡ませる。


「んっ…はぁ」
酸素が足りなくなったのか紫苑は自分から離れた。


「もう限界?」
「…やっぱりきみには敵わない」
「思い知ったか」
「うん。精進する。でも想いは伝わっただろう」


あぁ、おれだったのか。あんたが好き、という想いを伝えたかったのは。


*end*

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