いろいろな色
□それは嫌いだ
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かわらない かかわらない
吸血鬼は別に嫌いじゃなかった。
そう関わることもないし。
関わったとしても、有害ならば殺すだけ。
これといって差し障ることはなかったんだ。
お姉ちゃんが吸血鬼とつがいになった時も。
あのお兄さんなら許せた。
それで良かったのに……。
あたしの血みたいに真っ黒な布を掴み、力任せにぶん投げた。
それは綺麗な弧を描いて川に落ちる。
そのままゴミのように流れればいいと思ったが、流れが弱いらしく、しかも浅いようで投げられたそいつはすんなりと立ち上がった。
水が平気なら沈めに行くのに。
「随分と嫌われているのだな」
それがたっぷりと水に濡れた髪をかきあげながらあたしの方を見る。
「お前が嫌いなのは私か?それとも私たちか?」
「お前だよ」
「暴食」
「しつこい」
たっぷりと水を含んだ服を絞りながら、それが立ち上がった。2mある巨体をリツィアは面倒だと思いながらも見上げる。日の光に照らされる金糸のような髪は、綺麗だと思うのにそれの髪だと素直に言えなかった。
「暴食」
「あたしの名前は暴食じゃない」
「じゃあ、名は?」
「教えない。お前のも知らないし」
「私は……」
「言わなくていい。覚える気もない」
そんなもの知りたくもない。必要もない。
ぎっ、とリツィアはその瞳に嫌悪感を織り交ぜて睨みつけた。それは、表情を変えることなく無表情なままこちらを見る。
「教えてはくれないか」
「ゼッタイにいや」