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□零崎哀織の人間項目
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初めて、零崎軋識として、式岸軋騎を恨めしく思った。
そいつを見ているとふつふつと怒りではない、淀んだ汚い感情が沸き起こる。
「哀織」
ぽつり、と呟くと、そいつはくるりとイスを回転させて振り向いた。
「なに?」
そいつは首を傾げ、俺を見た。
さらりと流れる淡い水色の髪。
無言で近づいて、抱きしめる。
「……軋騎?」
そいつの口から出た名は、零崎軋識ではなく、式岸軋騎だった。
なんて、もどかしい。
たとえ、こいつが俺(軋騎)に「愛してる」と言ったとしても、満たされない俺(軋識)がいる。
いっそのこと、俺(軋騎)ではなく俺(軋識)を愛して欲しい。
「哀織、」
「なに?」
「愛してる」
そう告げたのは、はたして軋識なのか、軋騎なのか……。
淀んだ感情
(きっと、コレが恋なんだろう)
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