雷銀小説

初めて逢った刻
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最初は…

何も感じなかったんだ…

ただ…誰かが苦しんでいるのだけが解った

『……』

気付いた時…

暗い…でも暖かい場所に

【俺】は居た

『助けて…』

『…誰だ…?』

目覚めて初めて聴いたのは幼い少年の声…

『…おねが…』

『……』

その声はすぐに消えてしまったが…

とても安らげる声だというのが解った

『…お前は…誰なんだ』

返ってくる筈もない声を

俺は暗やみの中で待ち続けた

『…たぃ…』

ときどき聞こえるその声は大体が淋しそうな声

『…ゃ…』

『……』

【俺】はただ黙って聴いていた…

聴くしか出来なかった

『…傷付けないで』

…誰を?

『…俺から奪わないで』

…なにを?

『置いていかないで…』

その声は段々強くなる

『…誰か…』

『……』

自分は聴くだけしか出来ないのが悔しかった
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