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□NEVER MIND THE MASTER
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俺はゾロ。
主人サンジに名前を付けてもらった元・野良の柴犬だ。
あ、違う。間違えた。
元・柴犬だ。
そう。
俺は今柴犬ではない。
だからと言ってハスキーでもブルドックでもない。

立派な人間だ。
案の定お約束に尻尾と耳はついているが…。
顔は‥目があって鼻があって口がある。
主人と然程変わらないと思う。
ただ髪は葉っぱ色だ。
人間の体は凄くよくできててカラフルな世界に目眩がする。
何故俺がこんなことになってるのかってのにも理由がある。
それは今朝のことだった。

『じゃー行って来るなゾロ!!』
『ワンっ!!』
主人の出勤を見送って一人で何して遊ぼうかと考えていたときのこと。
ベランダから一頭の犬がこちらを覗いているのに気が付いた。
俺はもちろん吠えて威嚇をしたが、身じろぎ一つしないそいつに自信喪失しかけていた。
すると、相手が
『お前がゾロか?』
静かに話し掛けてきた。
奴はドーベルマンって種類の犬で俺よりずっとでかくて強そうだった。
ちょっとドキドキだ。
『そーだけど‥何の用だ?』
俺が恐る恐る尋ねると、そいつはピシッと座り直し、そして…
『私はチャカというものだが‥中に入れてもらえないだろうか』
そんなことを言い出した。
『ダメだ!俺は主人にこの家の番を任されている。入れる訳にはいかない。』
牙を剥き出しそう吠えてやった。
すると
『確かにそうだな。私が軽率なことを頼んだ。すまない。だがせめて私と普通に話ができる窓際まで来てくれないか?』
なんだかとっても礼儀正しい奴だ。
俺が信用して窓際付近まで行くと、突如ファンファーレが鳴り響いた。
『Σι!!!!!!?』
『おめでとう!!ゾロ、君は《第32回全国野良犬から下剋上!!世界で一番幸せな主人にしてあげたね大賞》で見事特別賞を受賞したんだ。』
なんだそれ‥ι
そんなものが世の中にあったのか?
全国なのに世界一ってのがなんか胡散臭いけど‥
まぁそこらへんは目を瞑った。
『それ‥本当か!!?』
『ああ。本当さ。全国で野良犬を拾った人達の中で君の飼い主が一番君から幸福を感じていたんだ。』
それが本当ならとっても嬉しいことだ。
俺が主人を幸せにしているんだからこれ以上の喜びはない。
『‥そぅなのか‥サンジは幸せなのか!!』
思わず尻尾を大きく振った。
『それで‥大賞の賞品の話なんだが‥』
『なんだ!!?賞品まであるのか?もしかしてお金とかか?』
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