出荷済み。第1便

□生きることと失うことと…
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少し記憶がおぼろげだ。
口に残る苦い甘味と、感覚のない足。
何があった?
よく思い出せない…。


「ゾロ、起きろ。」
聞き慣れたやさしい声。
「いい加減寝すぎだ。」
ため息と共に頭を撫でられた。
薄く目を開く。

「よぉ。」
金髪が俺を見下ろしていた。
「ここは‥?」
「ん〜…どっか分かんねーけど島の宿屋だ。」
タバコの匂いに目眩がする。
「俺はサンジ。お前はゾロ。ちゃんと分かるか?」
男がタバコの火を壁に押し付けながら言う。

「…あぁ‥」
「そうか。ならいい。」
サンジは目を細めて笑った。

彼が言ってくれて助かった。
そうだ、俺は何だか度忘れしていた。
麦わらの船長にスカウトされ、一緒に旅をしている仲間だ。

「…なぁ、他の奴らは?」
「ん?どっか行ったんじゃねぇ?」
サンジが新しいタバコに火を点ける。

「…そうか。」
頭が重い。
なんだかよく分からない。
「なぁゾロ‥」
サンジの冷たい手が俺の頬に触れた。
「もう、なんもかんも忘れちまえ。んで、何も考えんな。」

「…ああ。」
確かに考えるのも嫌な気がしたので、また瞳を閉じた。


俺が次に目覚めたときには部屋が変わっていた。
「起きたか?」
「…ああ。ここどこだ?」
もう一度辺りをよく見回す。
「前とは違う場所だよな。」
重くて仕方ない頭を少し傾けた。
「あぁ。お前の為に部屋変えてもらった。ここならキッチンもあるし、お前に栄養のあるもん作ってやれるからな。」
サンジが後ろにあるキッチンを親指で指差した。
確か彼は料理が上手い仲間だった。
コックだったと思う。
「早速使ってみるか。今なんか作ってやるから。」
「サンジ‥」
俺から離れようとするサンジを、腕を延ばして掴んだ。
指先にも腕にも思うように力が入らない。
「なんだ?」
「これは…何があった?」
腕が力を失う。
パタリと腕がベッドに還った。
「‥何‥何だろうな。」
サンジが小さく笑う。
「誤魔化すな。こんなんおかしいだろ…アイツらはどこにいんだ?」
「お前流石だな。こんだけ大量に薬入ってんのにちゃんと考えられてる。」
サンジが紙袋に詰まった薬を俺に見せ付ける。
「何…」
俺の体に何があった?
薬を飲むなんてこと‥今までにあったか?
こんなに鉛のように体が重いのはそのせいだろうか…。
「なぁ‥ゾロ」
サンジの手が俺の体に触れる。
冷たくて優しい手だ。
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