出荷済み。第1便

□だから、…だけど。
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無理矢理に組み敷かれた躯は悲鳴をあげる。

「んっ‥んっ!…んっ!!」
どんなに唇を噛み締めても突き上げられる度に微かに声が漏れてしまう。
目隠しをされていても突き刺さる視線を感じる。

「…も、や‥めっ」
「黙れ」

肌に触れる体温は極一部で、虚しさは募るばかりで。
どんなに求めても、埋められることのない心の隙間は、躯を繋げても依然として変わることはない。
それどころか益々酷くなるばかり。

「っ‥ゾロ、や‥だ」

もう辛くて。
好きな人に、躯だけで利用され続けるのにはもう、堪えきれなくて…。
酬われない恋心なら、早く捨ててしまった方がいい。

「黙れっつってんだろ。」
低い声は遠くで。
手が届きそうで届かない場所に。

俺の心の声はゾロには届かない。

何度もゾロに許してきた躯は既にボロボロで‥そして心はそれ以上に崩れかかっていた。

「ほら、イけよ。」
「ッ‥ぁあ…!!」

「っ…」
いつものように女みたいに最奥を貫かれ、イかされる。
荒い息も調わないまま、床に躯を叩きつけられ、罵声を浴びせられる。

「今日は口答えが過ぎんじゃねぇか?淫乱コック。そんなにお仕置きされてぇのかよ。」
「ふ…っ」
身じろぎしながら首を横に振る。
掴まれた髪がぶちぶちと音をたて切れた。
ゾロの手が俺の頬に触れる。
「…な、にっ」
視界がきかない為、次に何が起こるのかわからない。
ゾロの指は頬から滑り顎へ。
そして唇に触れる。

こんなこと初めてだ。
肌に触ることもしないのに。
何も見えなくても視線だけはビリビリと感じる。
生暖かい息遣いが近づいて、唇に絖るものが触れた。
(……え?)
呼吸を奪われる。
生気を吸い取られるんじゃないかと思うくらい、荒々しくキスをされた。

初めてのキス。
なんで…涙が零れそうになる。
こんなことをされたら諦められるもんも諦められなくなる。

荒々しくてもキスはキス。
恋い焦がれ、やっと手に入れたようなそれは、今となっては俺の決意を揺るがせるものにしかならない。

「っ‥ん‥」
解放された唇は、またゾロの指になぞられ上を向かせられる。


「…安心しろ。」
ゾロが囁く。

「今日で最後だ。」

(な、に…?)

「もうテメェにゃ手ェ出さねぇよ。」

「なん、で…」

ゾロは答えない。
代わりに目隠しの黒い手ぬぐいが外れた。
淡い月明かりがゾロの表情を隠す。
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