出荷済み。第1便

□それが僕のすべて。
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「…早く自分で気付かなければだめよ?そうでないと彼が辛い思いをするわ。」
「気付く?なにに?」
「それも自分で分からなければ意味がないの。私に言えるのはそれだけ。ごめんなさいね‥」
「そっか。なんかよくわからないけど‥俺、もう行かなきゃ。」
「そう‥。それじゃね。」

最後に握った彼女の手は、氷のように冷たく、温かい筈の微笑みは瞳の暗さにそれを消されていた。










「…ただいま。」

部屋に入るとそこは真っ暗で、人の気配を感じるのが困難な程だった。
「ゾロ?」
奥の部屋を覗く。
部屋の端に大きな背中が浮かび上がって見える。
「なんだよ。いるなら電気くらい点けろよな。」
電気のスイッチを押すが電気が点かない。
「なんだ‥電気きれてんのか?うちに買い置きってあったっけ。‥なぁゾロ?」
返事がない。
大きなため息を吐いて、大声を張り上げる。
「シカトこいてんじゃねーよ!」

「……お前‥」
ゾロの肩が震えているのに気付いた。
「…なんだよ怒ってんのか?」
拗ねたガキを相手にするようにしゃがんで顔を覗き込む。
「…って‥おい!」
覗き込んだゾロの顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。
ゾロの泣き顔なんて初めてで、俺はそのまま固まってしまった。
「…クソっ‥」
ゾロはズズズと鼻を啜り、膝を抱える。
「な…なにかあったのか?お前が泣くなんて‥「勘弁してくれ。」」
ゾロの呟きにビクっと躯が反応する。
「もう‥これ以上は、辛いんだ。」
ゾロがしゃくり上げる。
「…なに‥?」
自分が何を言われてるのか分からない。
「どぉゆう意味だよ‥なにが辛いってんだよ…」
ゾロは答えないまま、ごろりと横になった。

「…出てってくれ。もう、堪えられないんだ。」
溢れた涙が月の灯に光っていた。
「…なんなんだよ。信じらんねぇ。別れたいなら、そうはっきり言えばいいじゃねえか!それにここは俺ん家なんだよ!!出てくのはテメェの方だろっ!」
一気にまくしたてる。
なんでゾロが泣いてるのか、なんで出てけって言うのか、理由が全然見当たらなくて…不安で不安で堪らない。
「…なんとか言ったらどーなんだよ!」
嫌われるようなことをしただろうか。
最近は喧嘩もなくて‥ずっと順調だと思っていた。
それは俺の思い過しだったんだろうか…。

「…サンジ」
「…なんだよ。」
「好きだ。」
全く話の辻褄が合わない。
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