出荷済み。第2便

□最愛の人。
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「ねぇ、あの子孕んじゃったって本当?」

横に転がる女は興味津々といった様子で乾き切らないマニキュアに息を吹き掛けながら俺を見上げた。

このマニキュアは真っ赤なルージュとお揃いで、俺がプレゼントしたものだ。

「あぁ、俺の子かなんて確信ねぇのに、泣き喚きやがった。あのヤリマン」

「アンタの濃いんじゃない?確かこれで3人目でしょ」

「…4人目だ。」

俺は小さく溜め息を吐きながら身を起こした。

「ゴムくらい付けなさいよ。下ろすのにだってお金かかるんだから」

「金なんか腐る程あるだろ」

「半分くらい腐ればいいのよね」

女は高く笑って俺の首に腕を伸ばした。

「金の亡者なお前がよく言うぜ。」

「最近、お金には興味ないのよ。お金なんかあったって詰まんないんだもん。」

女は俺の頬に唇を寄せ、真っ赤なルージュで跡を残した。


「この色気に入ってるの。」

「お前の好みは知り尽くしてるからな。」

擦り寄ってきた体を膝に乗せ、後ろから抱き締める。


「…ねぇ、ゾロ。私たちって世界に2人だけよね。」

「あぁ‥そうだな。」

「私、アンタと姉弟でいられてよかったと思ってるの。」

女は擦り寄るように体をねじり、俺の頬に手を伸ばした。

「あんたと姉弟じゃなかったら、私絶対魅れてるもの。姉弟だから恋愛感情もなくいられるのよ。」

姉はいやらしい笑みを浮かべ、俺の唇にキスを施した。

「姉弟だからって俺と恋愛しないなんて勿体ねぇんじゃねぇか?」

「あら、アンタが碌でなしだって分かってるから恋愛したくないのよ。」

姉は俺の体から離れ、バスローブを羽織直した。

「孕まされたら堪ったもんじゃないし。」

「誰彼構わず盛ってるような言い方すんな。」

「…私に盛ってるくせに。」

「‥は?」

「奥歯が一本欠けてるわね。歯医者に行けば?」

女がニヤリと笑う。

「何で知ってんだよ‥」

「私の情報網を甘く見ないで。‥じゃあそろそろ寝るわ。夜更かしはお肌に悪いから。」

姉は一度も振り返らないまま俺の部屋を出ていった。


「…マジかよ…」

俺はその扉を見つめながら奥歯を噛み締める。

この奥歯は何日か前に抱いた女を、ヤってる最中“ナミ”と呼んでブッ飛ばされた結果だ。

左の奥歯が一本欠けた。


「クソったれ」


…別に意識したわけじゃない。
無意識だ。

多分。
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