復活

□居場所
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将軍中二 黒曜前


恭弥side

またこの季節がやって来た

あれから何年経ったのだろう…いや…まだそんなに経っていない

綱吉はまた苦しむのだろう

この前後一か月は一年で一番弱くなる時期

そして今日は一年で最も弱くなる日であり最も僕が無力になる日でもある

僕にはどうすることも出来ない、傍にいることしか出来なんだ

何も言わずに、何も聞かずにただ綱吉の居場所はここにあるんだよと伝えるだけ

綱吉は今、あの場所にいる

雨の音が忌まわしい記憶をフラッシュバックさせる

応接室のドアが閉まる音が響いた




*  *  *  *  *




雨の中ある場所に向かう

毎年、この日に必ず来ている場所

あの時と変わらない、あの場所へ

菊の花を手に持ちあの忌まわしき記憶が渦巻く場所へと向かう

進まない足を無理矢理動かし歩み続けた



『よぉ、去年振り
未練がましくまたここに来ちまった』



返答はない

自己満足で吐き出す独り言

持っていた花を置き佇む



『あれからもう3年だ
短い様で長かったな…
ガキが何言ってやがるって?』



ははっと笑う声が空しく響いた



『後悔してねぇんだよ、俺
アンタらを殺したってのに俺は後悔をしちゃいない』



あの時拳銃を撃った感覚が蘇る



『後悔してないのに毎年この日になると俺は人を殺したんだって実感する
情報屋なんて営んでるんだ、俺のせいで死んだ人間なんて腐るほどいる
でもそれはあくまで画面の向こうであり俺が直接この手で下した訳じゃない』



十字架は何も7つばかりじゃない

何十、何千、何万といった十字架を俺は背負っている



『俺は最悪の人殺しだ
誰かの為と理由を付けただけの殺人鬼なんだよ…!!』



握りしめた拳が震える

握りしめすぎたせいか爪が刺さり血が流れる



『化け物風情が何ほざいてやがるって?
しかたねぇだろ、これでも俺はお前達と同じ人間なんだよ』



冷たい風が吹き雨に濡れた体を冷やす



『…最近俺を慕ってくれる奴が増えたんだ
そいつらは俺を人間として慕ってくれている
化け物の俺を知らねぇんだ
もしそれを知られたらと思うとすげぇ怖い…、
怖いんだよ……!!』



両手で体を自分で抱き締める様に掴みそのまま蹲る



コツコツッ



足音が静寂の中響いて聞こえる



「帰ろう、綱吉」



蹲る綱吉の背中を優しく擦るのは最も信頼する右腕である恭弥であった

毎年迎えに来る恭弥の顔は毎年同じ

苦しそうな顔、辛そうな顔

全部俺のせいでこんな顔をさせてしまっている

背中に感じる暖かさにまた助けられる

情けない



『…俺、ここに来るのもう止めるわ』


「…え?」



蹲っていた俺はゆっくり顔を上げ恭弥を見て笑う

恭弥は目を見開いて驚いている



『恭弥が辛い顔するの嫌だし俺のせいでそうなってんのが嫌なんだよ』



無理にそう笑う綱吉をみて恭弥は綱吉を抱き締めた



「僕の事は気にしなくていい
確かに綱吉が辛い思いをしてるのを見て僕も辛い顔をしているのかもしれない」


『じゃあ尚更!』


「それでも今日と言う日があるからこそ綱吉は今日と言う日に一年分の溜まった苦しみを吐き出せているんだよ
いっつもいっつも綱吉は我慢して…我慢し続けてる
でもこの日の綱吉は苦しみを自分の言葉でちゃんと吐き出せている
いままで絶対吐かなかった弱音をちゃんと吐き出してる」


『恭弥…』


「この日僕は綱吉の力になれなくて無力だけどそれでも綱吉が辛いってキツイって言葉にして吐き出せているなら僕は無力でいい
綱吉がちゃんと弱さを出せる日ならいいんだよ、僕は」



恭弥の綱吉を抱き締める力が強くなる



『……恭弥、ありがとう』



恭弥の背中に手を回した綱吉

噛み締める様に綱吉はひっそりと涙を流した

恭弥はただ何もできずに綱吉の頭を撫でるだけであった




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