短編
□mermaid girl
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(豪炎寺視点)
「ねぇ、この話さ。」
「……?」
持っていた本をぱたん、と閉じて名字は俺に向き合った。
読んでいたのは、
「…人魚姫?」
あぁ、夕香がさっき名字に読んでとせがんでいた本だ。
「そう、人魚姫。豪炎寺、どんな話か知ってる?」
確か、助けた王子様に恋をした人魚姫が声と引き換えに人間になったが、結ばれることは叶わず、王子様を殺すことよりも泡になることを選んだ…という様な話だった気がする。かいつまんで伝えれば、
「そう、そんな感じ。」
と、答えた名字は難しい顔をしていた。
「それがどうかしたのか?」
人魚姫の話がどうしたというのだろう。
人の事を言える立場ではないのは重々承知だが、名字は口数が多くない。その為、話の真意に気付くまで時間がかかることがある。
「人魚姫の取った行動。私なら泡になるという選択肢は無いな、と思って。」
「……それは、あの場面で俺はお前に短剣で一突きにされる、ということなのか?」
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