銀魂ショートストーリー
□猫とりぼん
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「酢…こ…ん…ぶぅぅ……」
やつれた顔で歌舞伎町内を歩く神楽。
理由はもちろん酢こんぶ。
つい先程、銀時に「お前にやる小遣いなんてねえ」と言われ、必需品ともいえる酢こんぶ代まで貰えなくなってしまったのだった。
「あんの銀髪天パニート…っ!!自分のいちごみるくは買うくせして、酢こんぶの一個や二個買ってくれないって一体どーゆーことアルか…!!」
ズンズンと怒りを込めて歩く神楽の姿を、町の人も何事だと遠巻きに眺める。
しかしそんな中、神楽の姿を違う視線で見る男が一人いた。
「新八もコンサートだか行ってやがるし…全然使えな…いっ!?」
神楽は突然腕を掴まれ、路地裏へと引っ張られた。
バッ、と勢いよく振り向く。
しかしその姿に神楽は思わず、目が点になった。
「……へろーキティ…??」
そこには何故か国民的人気キャラクターの、あの猫がいた。
といっても、もちろん着ぐるみであるため、誰なのかは分からない。
何を思ったかキティちゃんはその無表情な顔で、ぎゅうっと神楽を抱き締めた。
そして神楽の手を引っ張り、路地裏の向こう側へと歩いていった。
(……何だろう、こいつ…?)
神楽は首を傾げるも、そのファンシーな姿にまんまと惑わされて、心のうちで何か楽しいことがあるかもと少しウキウキしていた。
「ん?キティちゃん、おい。ここ遊園地じゃないヨ。林ん中だよー。」
あの路地裏から、どうやって林の中に辿り着いたのかは分からないが、キティちゃんは依然として黙ったままである。
そもそも口すらもない。
「……なんか想像してたのと違ったから帰ってもいいアルか?」
来た道へと体を向ける神楽に、キティちゃんは再びギュッと抱きつく。
中に入ってるのが変なオッサンだったら、なんて考えを持ち合わせていない神楽は、ただキティちゃんの謎な行動に首を傾げた。