銀魂ショートストーリー
□二人片想い
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気付いたというか、嫌でも気付かされたのがいつかの喧嘩中だった。
特に理由は無いが、アイツと会ったら取っ組み合いの喧嘩になる。
それが習慣化しつつあった頃だ。
『今度こそ決着着けてやるアル…っ!!』
公園の小さな広場で、その日もお互い地面に背中を着けながら両手で押し合い、取っ組み合い。
そこまでは至って今までどおり。
だけど公園の入り口付近で聞こえた、聞き慣れたその足音につい俺はそっちに意識をやった。
『うわっ…!?』
今まで釣り合っていた力が一方に傾き、不可抗力でチャイナは俺の上にドサッと倒れた。
顔をしかめて公園の入り口からチャイナへ目をやると、すぐ近くに顔があって。
『うゆ…。卑怯アル、急に力抜いて…』
俺の胸の辺りから顔を上げたチャイナに、心臓ら辺から全身にかけて熱くなっていったのが自分でも分かった。
土の上。
バカみたいだけど、なんとなく、ずっとこのままでもいいかもと思った。
『っておい、サド?大丈夫アルか?なんかゆでダコみたいで美味しそうアル。』
『…なんでい。俺だけかよ。』
『?』
チャイナの奴は至近距離にも関わらず至って涼しげな顔。
アホらしいと、そのときはすぐに体を起こしてチャイナのでこを小突いたけど、結局それも単なるその場しのぎの対応でしかなかった。
そのとき、微量ながらにもその気持ちに根拠はあったのだが、なんとなく。
なんとなく認められねえ。
「あんパーンチっ!!!」
「ぶっ」
そんなことをぼんやり考えながら堂々巡りを繰り返していると、あんぱんの袋と共にアイツの声。
……何、このタイミング。
「何すんでい。」
「何って、あんぱんアル。パンチじゃなくて投げただけだけどな。」
「何。くれんの?」
「うん。」
こーやってたまに素直に頷くのも腹がたつ。
なんか可愛くて、どうにもやりきれない、そんな何かが俺の胸の中にモヤモヤを生み出す。
「さっきお前んとこのミントンに会ったネ♪ほら、いっぱいくれた!」
そう言ってチャイナは俺にあんぱん入りの紙袋を見せつける。
…まただ。
今度はモヤモヤじゃない、そんな甘いもんじゃない。
「…何、山崎なんかに貰ってんでい。」
「だから、今さっき会ったネ!耳あるアルか?」
「そのあんぱん食うんじゃねえ。俺が貰ってやりまさぁ。」
「この神楽様がそのあんぱん一個あげただけでも相当感謝すべきとこネ!!なんでお前にこれ全部あげなきゃいけないアルか!!」
チャイナの声が頭に響いて、俺はやっと苦いもんから脱け出した。
…うん。
何言ってんだ俺。
ヤキモチって奴なのかな。
……だから嫌だったんでい。
こいつをそーゆー気持ちで見んの。