銀魂ショートストーリー
□透けるオレンジ
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「やべ、財布忘れた。」
夏のある日のお昼時。
珍しくそれなりに真面目にパトロールをしようと歩いていた沖田であったが、うっかり財布を屯所に忘れてきてしまった様子。
ここまで来たし、特にお金が必要というわけでもない。
だが財布がないっていう状況もいただけない。
「ちっ。めんどくせー。」
なんて吐き捨てながらも、沖田は屯所へと踵を返した。
──────…
(ねむ…。あつ…。このまま部屋行って寝ちゃおっかな…。)
屯所へと帰ってきた沖田は、ふああ、と大きなあくびをかきながら、自室へと歩く。
するとちょうど曲がり角のところでバッタリ山崎と遭遇した。
わっ、と山崎は間抜けな声を出す。
「よう。財布忘れて戻ってきた。」
「あ、やっぱり忘れてたんですね。置きっぱでしたし。」
「………。」
ヘラヘラ笑う山崎に沖田は眉をひそめる。
そして無言の沖田に山崎もハッとして、慌てて口を紡ぐも遅かった。
「なんでてめーが俺の部屋の財布の状況把握してんでい………。」
「ちちち違うんですっ!!チャイナさんが…っ!!」
その言葉に、沖田は掴んだ山崎の胸ぐらから手を離す。
山崎はあからさまに安堵して、フゥと溜め息をついた。
「なんかよく分かんないんですけど、チャイナさんが沖田隊長の部屋に来られて…。」
山崎がそう言うと、沖田は一瞬目を丸くさせ、山崎を手で押し退けてドスドスと廊下を歩いていった。
(なんだ、それ。チャイナいんの…?俺の部屋に?)
グルグル考えて早足で向かったため、すぐに着いた自分の部屋の前。
沖田は躊躇も何もせず、スパンっと襖を開けた。
「チャイ…」
言いかけて、沖田は思わず自分の目を疑った。
(え……。)
目を丸くしながら、沖田はゆっくりと神楽の方へ近づく。
ジリジリと暑い、この夏の真昼。
元々風通りは良く、涼しい部屋……ではあるけど。
「チャイナ……。」
押し入れから引っ張って、そしてそのまま押し入れの前で力尽きてしまったように。
敷き布団も敷かずに、そのまま白い布団にくるまって、眠っていた。
(…………。)
数秒神楽を見つめ、沖田はストンと神楽の隣に座った。
神楽はぎゅうっと沖田の布団を抱き締めて、スースーと気持ち良さそうに寝息をたてている。
「…………俺も寝たいんですけど。」
あぐらをかいて頬杖を付きながら、沖田は眠る神楽に悪態をつく。
んむ…、と小さく声を漏らして、神楽はまた気持ち良さそうな寝息をたてた。
そんな神楽の、少しだけ日に照らされて透けるそのオレンジ色の髪の毛をフニフニと触る。
「んうー…?」
(あ…。起きた。)
眠たそうに目を擦る神楽。
なんとなく神楽の頭から手を離して、沖田は神楽を見た。