銀魂ショートストーリー

□むぎちゃ思春期
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青々とした緑が揺れる初夏の日。


屯所の沖田の部屋に、風鈴の音が響く。






「ほい。麦茶アル。」




カラン、と涼しげに鳴る氷。


お盆に乗せた2つのコップを、神楽は折り畳み式の小さなテーブルに置いた。




「場所分かったか?」


「うん。ザキが教えてくれたアル。」




早速コップを持ち、神楽はそれを飲もうとした。


が、沖田にコップを持ってる腕を掴まれ、危うく麦茶を溢しそうになる。


神楽は、何するネ!と叫んで、沖田を睨んだ。




「山崎なんかと喋んな。」


「おい。じゃあ初めからお前がついてこいヨ。」


「めんどい。」




そう言って、沖田はもう片方のコップを手に取り、ゴクンとそれを飲む。


(腹立つネ…。ごっさ腹立つネ…。)


眉間に深く皺をよせて沖田を睨みながら、神楽は一気に麦茶を飲みほした。

ムカムカは治まらないが、なかなかおいしい麦茶だ。





「チャイナ。」




低い声で呼ばれたと思うと、急に、神楽は後ろからギュッと沖田に抱きしめられた。


はあ?と、神楽は呆れたように顔をしかめる。




「何アル?」


「……ん?」





沖田の方を見ようと振り向くと、思いの外沖田の顔がすぐ近くにあって、神楽は目を大きくする。

そして目が合い、思わずカァッ、と顔を真っ赤にした。




「ちょっ…ち、近いネ…っ」


「…何顔赤くしてんでえ。」




そう言って、もっとぎゅうっと沖田は神楽を抱きしめた。

神楽は余計体中を熱くさせる。

そしてキツくまわされている沖田の手をグッと掴み、ぐるっと沖田の方へ向いた。




「なんでい?向きあった方がいいんですかい?」




赤い顔でムッとしながら自分を見上げる神楽に、沖田は意地悪げな笑みを見せた。


そんな沖田に腹を立てるように、神楽はぷくっと頬を膨らませる。

すると神楽は沖田の背中に腕をまわし、ギュッと沖田を抱きしめかえした。


思わぬ出来事に、えっ、と沖田は目を丸くさせて神楽のオレンジ色の頭を見下ろす。




「…こっちの方がいいアル。」




小さくそう言って、神楽は沖田の胸に顔をうずめた。



(…サドも。ドキドキしてる、アル。)



ドキン、ドキン、と二人の胸の音が重なる。



(……なんか…、すっごく……う、嬉しい…アル。)
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