蜜柑小説
□沖田あまえる。
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「チャイナ。」
「何アルか。」
「超好き。」
「あっそう。」
「……可愛い。ちっちゃい。好きでさぁ。」
「いい加減キモいアルな、コイツ。」
ある日のよろず屋。
何しに訪れたのか、まるで別人のような沖田が神楽にベッタリとくっつき、異様な会話を繰り広げていた。
理由は今のところ不明。
現在沖田は、ソファに座ってテレビドラマの再放送を見ている神楽の腰にギュッっと抱きついている。
しかし神楽は至って冷静沈着で、全くの無表情でおせんべいを食べていた。
「なあチャイナ。」
「……なに。」
「この二人さ、俺とチャイナみたいでさぁ。ほら、見て下せえ。チューしてやすぜい。」
何やら楽しそうに笑う沖田を神楽は数秒見下ろし、勢いよく立ち上がる。
そしてダダダダっと駆け、またまた凄い勢いで寝室の襖を開けた。
夕方から布団を敷いて、ごろごろとジャンプを読む銀時がだるそうに顔を上げる。
「やっぱ無理アル………っ!!」
「はぁ?何言ってんですか、君。一度引き受けたことはちゃんと守らないとね、社会出たら困るよ。」
「…〜っだってキモいもんっ!!!何アルか…あのサドっ!もはやサドでも何でもないネっ!!」
「さっき自分で、このくらい平気アルとか、むしろ服従させるとか言ってたじゃねえか。だから銀さんこうして二人っきりにさせてあげたんでしょ?」
「だってだって…、アイツ私の言うことなんか聞いてくれるし、最初は面白かったんだもん…。でも、もう今はガチでキモいネ……っ!ほら見て!鳥肌っ!」
半泣きで鳥肌のたっている腕を銀時に見せるも、銀時は面倒くさそうに溜め息をつき、ゆっくりとだるそうに立ち上がった。
やっと助けてくれる、と神楽はスン、と鼻を啜って銀時を見上げる。
すると銀時は瞳を潤ませる神楽をスルーし、事務所へと歩いていった。
「ちょ……っ、銀ちゃんっ!!」
「いいんじゃねーの?結構お似合いだよ、二人。」
「銀ちゃっ…!!」
そう言い残して、銀時は足早によろず屋をあとにした。
神楽はプルプルと震えながら、行き場のない苛立ちを抱えて、頬を膨らます。
銀ちゃんのバカっ!と、何度も心で唱えていると、後ろの事務所からドラマのエンディング曲が流れたのを聞いて、神楽はシュウウと頬をしぼませた。
ゆっくりと後ろを振り向くと、やっぱりソファに沖田はいる。
銀時に対する苛立ちではない、なんか切ないようなモヤモヤとした青色の気持ちが胸につっかかって、神楽は沖田の元へ歩いていった。
「…これ、最終回らしいでさぁ。最後、ターミナルで主人公とアキが、」
神楽はのんきに話す沖田の隊服の、白いフワフワのスカーフを乱暴に掴み、沖田を見つめる。
少しビックリしたような沖田のキョトンとした顔に、一瞬眉をひそめて、神楽はスカーフを掴む手をギュッと強く握った。
「……戻るまで、私が面倒みてやるネ。その代わりお前が戻ったら一発殴ってやるからな。覚えとくヨロシ。」
神楽はそう言って、スカーフから手を離し、ドンッと沖田の胸を押した。
背もたれに寄りかかった沖田は、まだキョトンと首を傾げていた。
そんなこんなで様子のおかしい沖田と、呆れる神楽の長い一日が始まろうとしていた。
「チャイナ。泣くなよ。」
「泣いてないっ!!バカっ!!」