蜜柑小説
□沖田あまえる。
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午後5時。
銀時の帰りはなく、新八は既に家に帰ってしまったのか、よろず屋には神楽と沖田二人きり。
何度か沖田に帰るよう言ったものの、沖田は帰らないの一言の一点張りだ。
神楽はハァ、と溜め息をつき、冷蔵庫へ向かう。
そして苺ミルクを取り出して、コップにそのピンクを注いだ。
「サドー?苺ミルクいるアルかー?」
「いるー。」
「いっぱい注いでやるアル。銀ちゃんに仕返しネ。」
プウ、と頬を膨らませ、大きなコップに二人分、八分目まで注ぎ、神楽は沖田の座るソファへ持っていく。
「はい。いっぱい飲むヨロシっ!」
「おう。」
神楽は沖田の隣に座り、二人並んで苺ミルクを飲む。
すると、沖田はテーブルにコップを置いて、うえっと顔をしかめた。
「甘……。」
「甘くなかったらうちの冷蔵庫に無いアル。」
そう言って神楽はゴクゴクと半分くらいまで飲む。
沖田はよく飲めるな、と眉をひそめて神楽を見た。
「あの天パ、そのうち絶対病気になるネ!やめろって言っても聞かないし、私たちが飲んでやるくらいがちょうどいいアル。」
そう言いながら神楽はコトン、とコップを置く。
すると、沖田は不意に神楽の腕を掴み、油断しきっていた神楽をドサッと押し倒した。
神楽が顔をしかめながらゆっくり目を開くと、両腕が沖田の手によって拘束され、足も沖田が乗っかってて動けない状態だった。
何より、距離が近いことに目を丸くさせた。
「チャイナ。」
「ひゃっ……」
ちゅっ、と頬にキスが落ち、神楽はピクンと体を揺らして声を出す。
思わず目をつむってしまった神楽は、再びゆっくりと目を開いた。
「…サ……ド……」
「…いいですぜい。泣いても。」
「泣かないアルっ!!違くてっ!!やめるヨロシっ…!」
「…やめない。」
「やっ……っ…」
近づいてくる沖田の顔にまた目をつむるしかなく、神楽はまた、ちゅっと頬や鼻の頭にキスを落とされる。
腕に力を入れようと努めるも、キスされるほどに力は抜けていくばかりだ。
「顔…。泣きそうでさぁ。」
「…っ当たり前アル、バカっ!!」
思うように力を入れることが出来ない苛立ちと、沖田に負かされている悔しさに結局神楽は強がりながらも瞳いっぱいに涙を溜める。
沖田はそんな神楽を見下ろしながら、嬉しそうに微笑んだ。
「……好き…。」
沖田は甘く耳元で囁き、顔を真っ赤にさせてギュッと目をつむる神楽をチラリと見て、薄く笑みを浮かべながら神楽の耳を甘噛みする。
神楽はもう何がなんだか分からずに、ポロポロと涙を流した。
「……泣き虫。」
「…うっ……るさ…いっ…!変態っ…!!」
「ほら。泣くなって。」
「何アルかっ…泣いてもいいとか、泣くなとか…っ、早く普通のサドに戻るヨロシっ…!」
「……少し黙って下せえ。吠えるチャイナも可愛いけど。」
そう言ってまた嫌がる神楽にキスをした。
ポロポロとこぼれる涙を沖田によって処理されるのも、神楽にとってとても耐え難く一種のスパイラルに陥る。
沖田はこれが悪いことだと全く理解していないようで、犬のように神楽をいじめていた。
「やっ…めろって……ばっ!!」
「いてっ。」