蜜柑小説
□うさぎの嫉妬
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「で、なんなんですかい?」
昼過ぎの歌舞伎町、薄暗い路地裏。
俺の腹を拳でグリグリしながら、読めない妙な表情で旦那は笑みを浮かべる。
なんなんでさぁ…。
うざいし痛いしそろそろ面倒になってきたので、刀の柄を握った。
やめてくれないなら、刀振って適当に逃げようって。
「痛てえんですけど。」
「君に彼女出来たって聞いたんだけどさ。」
は?と思わず声が漏れた。
いつの間にか旦那の拳は離れてて、のんきな顔でぽりぽりと頭をかいている。
俺の右手も刀から離れ、何故か拳を握っていた。
「で、……どーゆーことですかい?」
「聞きたい?」
ニヤニヤ笑いながらそう言いだす旦那。
俺は旦那をちらりと見て、路地裏から出ようとした。
「おい、嘘だって!!銀さんちゃんと教えるよ?な?」
「じゃあどっか違うとこにしませんかい?ここ臭いし、団子、食べてえし。」
結局、話は途中のまま団子屋に向かった。
まあ旦那があれだけグリグリ攻撃すんのは、どうせチャイナのことしかねえし。
でも、全然チャイナに会ってもねえんですけど。
「──あぁ。多分、男から金騙くらかしてた女ですかねい。あの女確かだいぶ連行に手こずったから。」
「めちゃめちゃ勘違いじゃね?」
「で、チャイナの奴がなに。」
真相は至ってただの勘違いで、俺がたまたま女を連行したときをチャイナに見られて、チャイナの頭のなかでそーゆーことになってたらしい。
そんなことはどうでもいい。
「聞きたい?」
「聞きたいです。」
またあのウザいニヤけ顔を見せた旦那だったが、俺が返事をしたのに驚いたのか目を丸くしてる。
聞きたいだろ。
チャイナのことは、
…たくさん。
「…まあ纏めれば沖田くんにとってハッピーな話でも、細かく話したら沖田くん残念でした、って話かな。どっち聞く?」
「じゃあどっちも。」
そう言うと、旦那はまた笑った。
とりあえず長くなりそうなので、団子を一本食べた。