蜜柑小説

□うさぎの嫉妬
2ページ/3ページ






「で、なんなんですかい?」




昼過ぎの歌舞伎町、薄暗い路地裏。


俺の腹を拳でグリグリしながら、読めない妙な表情で旦那は笑みを浮かべる。


なんなんでさぁ…。


うざいし痛いしそろそろ面倒になってきたので、刀の柄を握った。

やめてくれないなら、刀振って適当に逃げようって。




「痛てえんですけど。」


「君に彼女出来たって聞いたんだけどさ。」




は?と思わず声が漏れた。


いつの間にか旦那の拳は離れてて、のんきな顔でぽりぽりと頭をかいている。

俺の右手も刀から離れ、何故か拳を握っていた。




「で、……どーゆーことですかい?」


「聞きたい?」




ニヤニヤ笑いながらそう言いだす旦那。


俺は旦那をちらりと見て、路地裏から出ようとした。




「おい、嘘だって!!銀さんちゃんと教えるよ?な?」


「じゃあどっか違うとこにしませんかい?ここ臭いし、団子、食べてえし。」




結局、話は途中のまま団子屋に向かった。


まあ旦那があれだけグリグリ攻撃すんのは、どうせチャイナのことしかねえし。

でも、全然チャイナに会ってもねえんですけど。




「──あぁ。多分、男から金騙くらかしてた女ですかねい。あの女確かだいぶ連行に手こずったから。」


「めちゃめちゃ勘違いじゃね?」


「で、チャイナの奴がなに。」




真相は至ってただの勘違いで、俺がたまたま女を連行したときをチャイナに見られて、チャイナの頭のなかでそーゆーことになってたらしい。


そんなことはどうでもいい。




「聞きたい?」


「聞きたいです。」




またあのウザいニヤけ顔を見せた旦那だったが、俺が返事をしたのに驚いたのか目を丸くしてる。

聞きたいだろ。

チャイナのことは、



…たくさん。




「…まあ纏めれば沖田くんにとってハッピーな話でも、細かく話したら沖田くん残念でした、って話かな。どっち聞く?」


「じゃあどっちも。」




そう言うと、旦那はまた笑った。


とりあえず長くなりそうなので、団子を一本食べた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ