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□これでも100歩譲ってる
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顔もいい、スタイルもいい、頭もいい
おまけに超お金持ち
こんな人がいたらモテないはずがない
「じゃぁ何であたしはモテないのよっ!」
「それはりんごの性格のせいかな」
道を歩けばナンパされるし、スカウトだってされる
勉強だってテストで90点以下は取ったことないし、運動部じゃないけどスポーツだってできる
家はお金持ちで、別荘なんて色んなところにあるし、お手伝いさんも沢山いる
それがあたし
「やっぱりあんな奴らに、あたしの良さなんて分かんないのよね?!」
「はいはい、それ聞き飽きたから
それにりんごはモテないわけじゃないでしょ」
そう、モテないのではなく正確に言うと『モテるけど長続きしない』のである
理由は大体お察しの通り、彼女の性格にある
他は完璧なのだから
まぁ完璧な人が嫌い、と言う人もいるかもしれないが
「りんごの性格しらないで付き合った人とか、告った人とか、ナンパした人とか…その他もろもろは可哀想だよねぇ」
「何が可哀想なのよ?!
むしろあたしと話せて幸せでしょ」
「そうだネ(棒読み)」
納得のいかない顔でふてくされているりんごだけど、その顔も驚くほど可愛い
女の私から見ても、テレビに出ている芸能人なんかより間違いなく可愛い
だから女子には僻まれ、私以外に友達がいないのだ
私たちのいる教室の前を通る男子たちは、立ち止まりりんごをアホ面で眺めている
けど決して話しかけようとはしない
きっとりんごにこっぴどく何か言われたのだろう
ついでにその視線に気がつかないりんごは、意外と鈍感なのだと思う
え?どうして私がりんごと友達なのかって?
それは話すと結構長くなるかな…
ま、こんなりんごだけど良いとこもあるからね
じゃないと普通がモットーの私が、こんなトラブルの中心といるはずがない
「あ、そうだぶとう
“あとでけいと”って人知ってる?」
「あとでけいと?
なにそれ、ホントに人なわけ?
後で毛糸ってこと?」
やっぱりぶとうも知らないのか…
今日の昼休みに廊下で、ブリの子供(つまりぶりっこ)の群れが『あとで様あとで様』って騒いでたんだよね
芸能人とかだろうか?
とにかく、ものすごく人気みたいだったから気になったのだ
「ま、どうでもいっか
あたし“あとでけいと”なんて変な名前の奴には興味ないし」
「そう?じゃ、帰ろっか
りんご、今日はどっか寄るの?」
「近くにできたクレープ屋」
「はいはい」
前は車でお迎えに来て貰ってて、寄り道なんか出来なかった
毎日お稽古とかレッスンとか家庭教師が来るとか…そう言うのが嫌で、普通の中学生みたくなってみたくて、頑張ってお父様を説得したのよね
大反対されたけど、お母様も味方になってくれた
で、毎日じゃないけど、見事に放課後の自由な時間を勝ち取ったわけだ
「ぶとう、付き合ってくれるお礼に今日はあたしの奢りね」
「んーじゃぁ最初の1つは奢って貰おうかな」
『最初の1つ』って…
一体何個食べるつもりなんだろうか
この間のたこ焼きも3皿ぐらい食べてたような…
「りんご、何にする?」
メニューを見るとどれも美味しそうで、暫く悩んでから、あたしはイチゴチョコスペシャルを頼んだ
それから2人でクレープを食べ、(ちなみにぶとうは3つ食べていた)ぶとうと別れて家へと帰った
クレープは美味しかったし、今日はしつこい男に絡まれなかったのでご機嫌だったりんご
その時はまさか噂の『あとでけいと』と出会うことに、そしてあんなことになるとは思いもしなかった
→つづく
20110530:りと