long

□似た者同士なんて思いたくない
1ページ/1ページ








次の日


空は綺麗に晴れていて、清々しい気分で学校への道を歩いた


そこまでは良かった





「りんごちゃんやないか、おはようさん」





この忍足侑士のせいで、あたしの清々しい気分は一気にどん底に落ちた


忍足くんは同じクラスのテニス部で、天才だのなんだのって呼ばれてる人…らしい


テニス部は人気らしくて、女子たちは凄い騒いでいて、忍足くんもモテるらしい


しかしこのあたし、忍足くんが苦手です





「なんやりんごちゃん、無視せんといてや」


「おはよう…」


「今日もエラい可愛いなぁ」





こういうことを軽く言ってくるとこが苦手


なんか大人びてて、あたしを子供扱いしてくる感じも苦手


とにかく苦手





「う…うるさいわね!
あたし、変態は嫌いなのっ」


「酷いやん、いいこいいこしたるから落ち着いてや」


「子供扱いしないでよっ!」


「いいこいいこ」


「ひぎゃーぁ!撫でるなぁ!」





忍足くんの魔の手から逃れようと、あたしは下駄箱へとダッシュ


昇降口をくぐり抜けようとした瞬間、いきなり人が目の前に現れて、あたしは思いっきりぶつかってしまった





「きゃぁ?!」





痛い…


どんなぶつかり方をしたかは分からないが、あたしのおでこに相手の肘がヒットしたようだった


思わずあたしは涙目





「い…痛いじゃないのっ!」


「アーン?」





顔を上げて、ぶつかった相手の顔を見た


綺麗な金髪に、綺麗な目とその下に泣きボクロのある彼は、今まで見た中で一番と思えるほど格好良かった





「りんごちゃん、大丈夫…って跡部やん」





あとべ?


なんか聞いたことあるような…





「お前…この俺様にぶつかってきて謝りもしねぇとは、いい度胸だな」





………どうやらあたしは、間違ったことを言ってしまったみたいだ


前言撤回、こんな上から目線の偉そうな奴、格好良くも何ともないわっ!





「誰だか知らないけど、このあたしに謝れなんて、頭どうかしてるんじゃない?
それに、いきなり出てきたあんたが悪いのよ」



「アーン?お前、俺様を知らねぇのか?
………本当に氷帝の生徒かよ?」


「そや、りんごちゃんは何ヶ月か前に転校してきたばっかやったなぁ…
せやけどこいつ、生徒会長でテニス部部長の跡部景吾やで?」


「あとべ、けいご…?」





やっぱりなんか聞いたことあるような…


あとべけいご、あとべけいご…?!





「あ、分かった」


「当たり前だろ
いくら転校生だからって、俺様を知らない奴が…「“あとでけいと”だ!」」


「アーン?」





なんか聞いたことあると思ったら、ぶとうと昨日話してた“あとでけいと”がコイツだったのか


なんだかスッキリ


まぁ実は忘れかけてたんだけどね





「あ…あとでけいとってなんや?」


「俺様の名前は“跡部景吾”だ
“あとでけいと”じゃねぇ、覚えとけ!」





あとでけいと=跡部景吾


覚えとけって命令口調なのが気になったが、そろそろチャイムが鳴る時間だったから、ちゃんと覚えてあげることにした


流石あたし、優しい





「チャイム鳴っちゃうから、あたし行くね」


「ちょ、同じクラスなんやから一緒行こうや」





こうして騒ぎながら、忍足とぶつかってきた高飛車な女(顔は可愛いかった)は、廊下を歩いて行った


…そういやアイツ、ぶつかったこと謝ってねぇな







→つづく



20110531:りと




 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ