薄桜鬼長夢

□第1話
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文久三年 十二月末――

『はぁ…はぁ…』
「はぁ…はぁ…」
「待ちやがれ、小僧ども!」

追ってくる男の1人が走りながら言ってくる

『バ―カ!待てって言われて待つバカがいるかよ!』
「! あそこに逃げこもう!」

ピンクの服を着た少女は淡い水色の服を着た少年に言った
少女の名は雪村千鶴…
少年の名は琴宮裄斗…
千鶴が指差した方を見ると、ちょうど天水桶が作っている暗がりがあった

『お!さっすが千鶴〜♪』


2人はその暗がりに飛び込み、身を隠していると……

「逃げ足の早いやつらだ」
「まだ遠くまでは行っちゃいねぇ、捜せ!」

男達はそれぞれ道を進みながら刀を抜刀した
千鶴と裄斗は出来るだけ気配を消した

『(見つかったら確実に殺されるな…)』

裄斗は『どうしよう?』と悩んでいると、

「ぎゃあああっ!」
『!( 何事!)』
千「!!」

突然、あたりに響いた声…

「ひゃはははははは!」

悲鳴にかぶさるように聞こえてきた甲高い笑い声…

『(なんだ?あの気味の悪い笑い方…?)』
千「(な、なに………!?)」

浪士たちの声に混じって、刃を交える音がする

2人は気づかれないようにそっと騒ぎの方を覗いてみる

斬り殺されている浪士の近くで残る2人が対峙していたのは浅葱色の羽織りをまとったふたりの男達だった

『(あの羽織りどこかで…?)』

裄斗がそう考えていると二人目が倒れる
千鶴は羽織りから目線を上にやって目を見張った……

そこには、白い髪と爛々と光を放つ目は血のように赤い…

千「(夜叉、鬼……ば、化け物……?)」

男は浪士の身体を何度も何度も執拗に刀で突き刺している

千鶴はそれを見て震えだした
それに気づいた裄斗は千鶴を抱きしめ、落ち着かせる
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