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「待て!待てよ!!」

俺は声を荒げながらあいつの背中を追いかける。

「置いていくな!一人にするなよ!!    !!」

追いかけても追いかけても背中はどんどん遠ざかっていく。
それでも置いていかれたくなくて、一人にしてほしくなくて必死に叫ぶのに肝心な名前が何故か声にならない。

それかもどかしくて何回も何回も名前を呼ぶ。

「      !       !!」
唇はその音を出すための形になっているのに俺の口からは何の音も出なかった。

いくら叫んでもこの声が相手に届くことはない。

わかってる、わかってるさ。

だって、もうあんたは……


「……ばぁ、じる………」








「ダンテ!ダンテ!!もう朝よ!!」

静かだった部屋に遠慮なしに響くノック音。

昨日来たばかりだから今日は来ないと思ったのだが、そんな予想はやすやすと裏切られたらしい。

仕方なくベッドから起き上がり扉を開けるとそこには驚いた顔のパティが立っていた。

「び、びっくりしたぁ…」
「…自分でノックしただろ?」
「だって、ダンテいつもだったらこんな時間に起きてないでしょ?」

そう言ってパティは時計を指で指す。そこには07:30と浮かび上がっていた。

確かにいつもだったらまだ寝ている時間だ。

パティは心配そうに何かあったの?と聞いたがダンテは何でもないと答え、かわりに用件を聞いた。

あいつのことをパティに話す事は出来ない。家族の大切さを身を持って体験してきたのだ。話してしまったら悲しませるだけだ。

「あ、そうそう。お客さん連れてきてあげたわよ!」
「客?」
「うん。なんか怪しかったから外で待ってもらってるけど」

ほら、と窓から外を見るように促される。
それに従うように窓際まで行き下を見た瞬間、時が止まったように感じた。
だって、ありえる筈がない。あの時、俺は確かにあいつを殺した。

なのに、そこにいるのはどこから見ても俺にとって大切な人、家族、半身。
殺し合った末に自ら魔界へ身を投げ、心までもが堕ちて、俺が殺した、俺の大切な兄。

俺が兄の大切さに気づいたのは皮肉にも兄を失ったあとだった。
何であの時手を掴めなかったのか。何回後悔したのかもわからない。


もう一度だけでいいから会いたい。そんな気持ちから見てる都合のいい幻想かもしれない。それでもいいと思った。あんたにこの気持ちを伝えられるなら。


「ダンテ??」

突然黙ってしまったダンテを不思議に思ったのかパティが声を掛ける。

「悪いがパティはここにいてくれないか?」
「え?」




「お客サンにご用件を聞いてくる」






もう二度と殺し合いをする気はない。




だって、たった2人の兄弟じゃないか………


「なぁ、バージル」

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