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□フキゲンな君の手は
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「慈郎ー?どこー?」
がさがさっ
「んんー…」
あ、見つけた。
今日も日陰で気持ち良さそうに寝てる。跡部に探して来いって言われたから探してたけど、なんかすぐに見つかっちゃうんだよね。
「慈郎ー、こんなとこで寝てたらいくら日陰でも熱中症になっちゃうよ?」
「だれー…?」
「ゆうですよー」
私の名前を聞いた途端、飛び起きた。寝てた人がそんなに急に動いたら…!
「ゆう!?うわぁ、ゆうだゆうだー!俺ゆうに会えてうれCーよ!」
急に動いても慈郎はくらくらしなかったみたい、うん、慈郎ってすごいね。
「ふふ、私も嬉しいよ〜」
「マジマジ!?あれ…あ、うわわ、」
ん?慈郎?
どうしたんだろ、様子が変。
なんか…
「くらくらするっ…、」
「え、ちょ、慈郎…!」
時間差でくらくらした慈郎は、さっき寝てたみたいに後ろに思いっきり倒れた。
「慈郎大丈夫!?」
「ったー…、頭打った……」
「大丈夫?起き上がれる?」
起き上がれるって言って、起き上がろうとした慈郎は動けなかった。むしろ動こうとしなかった。
「ねぇゆう、あのね、」
「手、貸そうか?」
「やっぱりゆうは俺のことわかってる」
私の手を取った慈郎は嬉しそうに笑った。
その顔が一瞬で消えるのを、私は見逃さなかった。
あ、
「さっき見てたんだけどさ、ゆうと跡部が話してるところ」
慈郎の嫉妬。
「俺以外の男と話すなって言ったじゃん」
「だって慈郎が部活始まったときに居なかったから…」
「それでも、嫌、」
私の手を握ってた慈郎の手は、背中に伸びて、私を捕まえた。
ちょっと苦しいって思うくらいの強さで、慈郎は私を離そうとしない。
「ねぇ慈郎」
「なに…?」
「私が好きなのは慈郎だよ?」
「へ…、」
って、なんでこのタイミングで言っちゃったんだろ、自分で言ってて恥ずかしい。
「それほんと?」
「うん、慈郎が好き」
「俺が…一番?」
「慈郎が一番好き」
私ほんと何言ってんだろ。
でも慈郎のことを好きなのはほんと。
「俺も」
「え、」
「俺もゆうが一番好き、好き。大好き!」
お互いに好きだったのは知ってた。幼馴染みだし友達的な意味で、だったけど。でも、やっぱり。
「ねぇゆう、大好きだよ」
慈郎から言われてこんなに嬉しいのは、いつの間にか恋愛対象になってたんだなって。
慈郎の存在が、私の中でこんなに大きくなってて。慈郎と私が同じ気持ちなんだって思ったらすごく幸せになった。
フキゲンな君の手は
いつの間にか上機嫌になってて、今度は優しく抱き締めた。そんな慈郎に、私は思わず笑顔になった。
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