main
□ポッキーはないから
1ページ/2ページ
ガタガタッ
「んがっ」
試合中に転ぶ夢を見た。
あーあ、4−0で勝ってたのになぁ。
クスクスと聞こえるクラスの声は無視して、目を擦りながら上を見れば、もう昼休みの時間だった。
ゆっくりと立ち上がって、俺が起きて一番に声を掛けるある席へと向かう。
「ゆうー」
席が近いゆうとご飯食べようかなーって思って話しかけてみれば、
「も!むごー、もっもまっめめ」
(あ!ジロー、ちょっと待ってて)
ゆうは友達とポッキーゲームをしてた。待っててって言われた俺は、ゆうの隣に座って終わるまで見てた。
あ、まつ毛長い。
キスするんじゃないかってくらいの勢いで、女子同士だったけど見てるこっちがドキドキした。
ゆうがと言うよりは、友達が速いかな。
「んー!」
「はい、ゆうの負けー」
友達は楽しそうに笑った。あと少しのとこでゆうはポッキーを折って負けた。
「そういえば罰ゲームって何するのー?」
まだ寝ぼけてる俺は、だるい口調で問いかけた。
「んーと、仲良い男子とポッキーゲーム…だよね?」
「うんうん」
ぞわって、寒気がした。
ゆうと男子がポッキーゲームするなんて。
勝った友達は、他人事のようにただただ頷くだけで。
「じゃあゆう、誰かとしてきて!」
今もゆうを促す。
「やだなぁ…」
不覚にもイラついた。
自分が勝ったからもうどうでもいいんだ。
ゆうになんかあったらどうすんだよ。
久しぶりに目が覚めた理由が、こんな嫌なことだったなんて誰にも自慢できない。
.