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□Hauntd Mansion
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訪れた者を畏怖させるその館は賑やかで活気溢れる城下町の閑散とした街中の最奥に聳えていた。
闘技場から少し離れた路地の奥に位置する大理石で建てられた古めかしくも立派な館。
溢れるばかりの殺気が飛び交い、死を隣に戦場を幾度も掻い潜ってきた傭兵達もが固唾を飲む程に館から漂う「異様」は並ではない。
目には見えない『何か』が生ぬるい風に乗って傭兵達を包んだ。
背筋から氷塊の如く凍る様な寒気を感じながら
一同は武器を携えて館へと足を踏み出す。
「ここか…」
「い、いくら人助けだからってこんな泥棒紛いな事…気が乗らないね」
「まあそう言うなって。
人って文字とはな…えっと」
「ああもういいって。手伝えば良いんでしょ」
「いやはや皆さん、本当にありがとうございます」
きっかけはエルザが城下町でロッタ再会した事だった。
ロッタはある物を取り返す為に貴族の館に忍び込んだものの、そこであっさりとあっけなく魔物に返り討ちに遭いルリ城の地下牢に入れられてたとか。
話を聞いた所、どうやらその館の主に奥さんが誘拐されたらしい。
一人で向かってもまた返り討ちに遭うのが関の山。
そこで私達が一緒に奥さんを助けにいく事になったのだった。
入り口前に全員が立ち止まる。
繊細に彫刻されたアンティーク製の扉とノブに施された悪趣味な悪魔の鍵穴を見てかなりの大富豪であることが伺える。
扉から如何にも贅沢さを誇張している様で不快な気分になる。
首を振るって頭の片隅に追いやった。
目の前の事に集中しなければ。
ガチャリ
「開かない…?」
エルザが扉へと手を掛けるが、どうやら鍵が掛かっているようだ。
見かねたロッタが扉へと向かう。
「ね、ユーリス」
「何?」
「何だか顔色が悪いけど大丈夫?」
肩も強張ってるし、とレイシアユーリスの肩を指でつつく。
「だ、大丈夫だよ。べ、べっ別に怖いだなんて全然思ってないし!」
レイシア手を握りながらユーリスは声を張り上げた。
「・・私そこまで聞いてないけど」
ほぼ暴露気味な発言にユーリスはしまったと顔を真っ赤にし、顔を伏せる。
過剰とまでに強気になる少年を見てはて、と昔を思い出した。
まだ彼が今より幼かった頃、廃屋を拠点とした隠れ家で寝台に二人でくるまっていた時だ。
窓からの隙間風の音、ギシギシという床の音に怯え、がっちりとレイシアの服を掴んでいた。
「……ユーリ「さあ、開きました。イルミナ、今いくぞ・・」
聞くと同時に、問い掛けはロッタにより遮られた。