ZEXAL

□想い人は先輩
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俺よりふたつ年上のレイナ先輩は、カッコイイし、デュエルは強いし、何より優しい。
先輩はよく俺達のクラスに来て、生徒に(俺もその内のひとりだけど)デュエルのやり方を教えたり、談笑したりする。
そのせいか、先輩は男女問わずに人気がある。少し面白くない。
今日も楽しそうに笑って、話をしている。隣にいる生徒が、先輩の笑顔を一人占めにして、


「あああぁ!!もう!!」


やるせなくなって叫び声を上げてしまう。もちろん、クラス中皆の視線が俺に向くわけで。
先輩も目を丸くしてこっちを見ている。自分で叫んでおいて何だが気恥ずかしくなってしまい、その視線から逃れるように教室からそそくさと出た。
何だよ、俺。かっこわりぃ…。男の嫉妬は見苦しいって言うけど、本当かもしれない。


「はぁ…、情けない…」


先輩が他の奴らと話しているだけで黒いどろどろした感情が頭の中を回って、正常な思考でなくなってしまう。
いつも俺の後ろをついて来る幽霊が今はいなくてよかったと心から思った。こんな悶々とした姿なんか見られたら、また質問責めをしてくるに違いないから。


「、遊馬!」


俺が想いをよせている人の声がやけに廊下に響いて、大袈裟に肩をびくつかせてしまう。


「どうしたんだよ、いきなり叫んだかと思えば教室を飛び出して」


軽く肩を弾ませている所を見ると、走ってきたのだろうか。俺の為に?
それだけで低くなっていたテンションが一気に高くなるのだから、俺の脳はなんて単純な作りをしているんだと少し落ち込む。


「何でもない!ちょっと外の空気を吸いたかっただけで」

「…、そう」


まだ何かを言いたそうにしていた先輩だけど、俺が笑顔で理由を並べ立てると納得したように先輩も笑顔になる。
その笑顔が今は俺だけに向けられているのかと思うと、少しだけ優越感に浸れた。


「な、先輩。俺とデュエルしようぜ!」

「ん?今からか?」

「なーあ、ダメ?」

「…いいよ。受けてたつ」

「やった!!」


でも廊下じゃ、さすがに目立つから中庭に出てデュエルしよう。先輩の手を引いて、走る。
ちらりと先輩の顔を覗き見ると一瞬だけ目が合って。その時の表情がひどく慈愛に満ちたものだったから、知らずの内に俺の頬は熱く火照ってしまっていた。











(年の差なんて関係ない)
(どれだけ想っているかが大事なんだ)



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