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□すべてあしたも眩しくありますように
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「あなたはどのカードも大切にしているのね」
「ああ、大事な仲間達だ」
「ふふ、特にこの子…あなたのこと、とても慕っている」
堤防に広げたカード、少女はその中の一枚――スターダスト・ドラゴンを指差してそっと手に取る。そして虚空を見つめ、まるでそこに何かがいるかのように話しかけた。
「はじめまして、あなたに会うのは初めてだね。……うん、…へえ…そうなんだ、うん」
「………?」
「あ…ごめんね、つい癖で…」
「いや、構わないが…誰と話していたんだ?」
「スターダスト・ドラゴンだよ」
遊星は思わず目を瞠った。少女が目を向けていた場所を見てみるも、そこにはやはり虚空が広がるだけ。再び少女の方へと視線を戻すときょとんとした表情で遊星を見つめていた。こんな表情もできるのか、いつも笑ってばかりいた(といっても色々な種類があったが)からその他の表情を見たのはこれが初めてということになる。
「…、そこにスターダストがいるのか」
「うん」
カードは今だに両手の中。にこにこと嬉しそうにスターダスト・ドラゴンがいるだろう空間に話し続ける少女。何故か、遊星の胸に燻る妙な感情が全身を支配する。
それが何なのかは、今はまだ分からない。ただ、ひとつだけ分かることは、この時間が少しでも長く続けばいいということだけだった。
すべてあしたも眩しくありますように
title:幸福